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同士との邂逅
十七 感謝のことば
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部屋もめちゃくちゃにされていたが、術には気づかなかったらしい。試しに物置へ入ってみた横島は屋敷の内部を見渡す事が出来た。未だ熟睡しているハヤテを確認し、掃除道具とゴミ袋をアパートのほうへ持ってくる。それからずっと、ひたすら拾うという行為を繰り返していた。

(くそ……っ)
ギリギリと奥歯を噛み締めながら彼は無造作に破片を集める。かけらの鋭いところで指先が切れたが、構わずただ黙々と拾い続けた。
粗方片付けたおかげでようやく足の踏み場が出来る。掻き集めた破片を袋に入れ、ゆっくり立ち上がり、そうしてなんとなしに部屋の片隅へ目を向けた横島ははっと息を呑んだ。


片隅で粉砕されているその破片の模様は見たことのある模様だった。握り締めた袋の中で集めた破片がかちゃんと音を立てる。



それは、ナルトが初めて口にしてくれた、お粥を入れた皿だった。












胸がつまって言葉にならない。下唇を噛み締めて、横島は部屋の片隅で再びしゃがみ込んだ。

ひとつひとつ拾うたびに、ゆらゆらと揺れる視界。眼球の表面に張り付く水の膜をぐいっと腕で拭う。
最後の破片を拾おうと手を伸ばす前に、横島より一回り小さい手がそれを拾い上げた。


「……ナ、ルト…」

破片を手に、ナルトが横島を見下ろしている。何時の間に来たのか。しかしそんな事を考えるのも億劫で、しゃがみ込んだまま横島は顔を伏せた。
「……すまない」
謝罪の声が耳に入る。途端、彼はガバリと立ち上がった。


「なんで…っ、なんでお前が謝んだよ!!」
「……すまない」
「謝んなッ!!」

ガッとナルトの両肩を掴む。せっかく集めた破片が袋からぱらぱらと飛び散っていった。

「なんで泣き言ひとつ言わねえんだ!?なんで弱音ひとつ吐かねえんだ!?」

こんなんされたんだぞ!!と部屋の惨状を指差しながら横島は声を張り上げる。ガクガクと身体を揺らしても少しも揺るがないナルトに、益々彼は憤った。
「俺は、お前の前で泣いた!ガキみてえに泣いた!それなのに……ッ。正真正銘ガキのお前がなんでっ!泣き言ひとつ言わねえんだ!!」
ナルトの肩を掴んだまま、ずるずるとしゃがみ込む。

ナルトは無言で、肩を掴んでくる横島の手に手を翳した。すると青白い光が横島の手を包み込む。優しい穏やかな光は彼が先ほど破片で傷ついた指先を覆い、その傷を癒していく。


両肩を掴んでいる横島の手を外しながら、ナルトは呟くように言った。
「…だから言っただろう。うずまきナルトに関わったらお前に迷惑…」
「迷惑だなんて思ってねえよ!!」
鼻息荒く断言する横島に、ナルトはしばし呆然としていたが。やがてふっと苦笑する。

「……お前は、忍びには向いていないな……」

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