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珠瀬鎮守府
木曾ノ章
その5
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こうに戻す。人は、まだいた。こちらを見ている。薄い月の光では判断しづらいが、その顔は
「提督?」
 提督に似ている気がした。
「木曾、どうしたの」
 後ろを歩いていた不知火が、立ち止まっていた私に声をかけた。私は少し悩んで、彼女には何も言わないことにした。
「何でもない。それより、いつの間にこんなにお前と俺で差がついていたんだ?」
 私が立ち止まってから、不知火が追いつくまで一寸あった。
「途中で提督を見かけてね。事情説明だけしたのよ」
「提督と会った? さっきか?」
「ええ、ついさっき。あなたに追いつくつい二十秒ほど前」
 二十秒? 視線を不知火から、暗闇に向けた。もう人は立っていない。不知火が追いつくまでには、私が立ち止まってから二十秒以上ある。提督では、なかったのか?
「そうか。 とりあえず、早く宿舎に戻ろうか」
「そうしましょう」
 不知火に、尋ねることもないだろう。私は、宿舎に向けてまた歩き出した。



 休暇二日目。前日は気づかないうちに飲み過ぎていたのか、体調が優れない。
 私は暇を持て余していた。出撃や訓練をしない日は、この港に来てから初めてだった。出撃がない日は、日に一時間は射撃の訓練をしていた。今は休暇を言い渡されている。言い換えれば、訓練の類も禁止であるということだ。できることといったら、簡単な筋肉トレーニング程度。
 それも終わってしまうと増々時間を持て余し、部屋にいても仕方がないと思って、少し港を散歩にでかけることにした。
 青い空が、天上には広がっていた。海風が心地よい。波も高くなく、絶好の海戦日和だった。けれど、今日の私は戦うことはできない。
 私はどこへ行くか少し考えて、工廠に行くことにした。昨日壊してしまった装備のことについて、話しに行こうと思ったからだ。
「ああ、木曾の嬢ちゃんか。大丈夫だったかい」
 工廠について、中に入ると、私に気がついた老整備士は心配顔で訪ねてきた。
「ああ、昨日の戦闘か? 大事ない。ただ、装備の類は全部ボロボロだ。済まなかったな」
 答えると、老整備士は何が面白いのか、少し笑った。
「なぁに、装備も敵の砲弾や魚雷で圧壊なぞしてるだけさ。錆びて壊れたんじゃない。装備は壊すために作ったわけじゃないが、間違った壊れ方をしなかっただけいいさ」
「そういうものなのか?」
「壊さなければ、一番いいがな」
 老整備士は先程より強く笑った。
「何、言うとしたら少々扱いが荒いってことかね嬢ちゃん。響のお嬢の装備も壊れてはいるが、疲労が蓄積してる部分何かがね、やっぱり違うよ」
「すごいな、わかるのか?」
「伊達にこんな歳まで機械を弄ってはいないさ。まぁ響のお嬢とあんたじゃ、経験の差もあるだろうけどね。話を戻すが、嬢ちゃんが無事で、儂は良かったよ」
「結
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