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珠瀬鎮守府
木曾ノ章
その5
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 てんやわんやで、祝賀会は終わりに近づいていた。
「提督、見たか!」
 雷は酒で酔いつぶれ、先程からここにいない人と会話している。
「おらおら雷、何してる〜」
「そうだぞ、提督は向こうだぞ〜」
 天龍と長月は雷程ではないにしろ、かなり酔っていた。響は、途中で用があると行ってどこかへ行っていた。
「ねぇ、木曾」
「ん、どうした」
 結局、最後まで素面で飲んでいたのは私と不知火だけだった。
「戦う意味って考えたことある?」
「なんだ、急に」
「ここに初めて来た時、提督が私に言ってきたことよ」
 その言葉には聞き覚えがある。同じようなことを私も言われたからだ。
「敵を沈めることじゃないのか」
「不知火もそう答えたわ。けど、なんでかしらね。提督はちょっと笑ったのよ」
「おれの時も、そういえばそうだったな」
「あとで鳳翔さんに聞いた話だけど、吹雪たちは違ったそうね」
「なんて答えたんだ?」
「自分で考えなさい、だって」
「なんだそれ」
「そう、何なんでしょうね。第二艦隊、活躍しているって聞いてるでしょ? 戦う理由にも、その秘訣があるのかと思ってね」
 それを聞いて、真っ先に浮かんだのが『死ぬのが怖い』だった。これが、秘訣?
「ま、第二艦隊も初めは上手くいっていなかったわ。戦う理由だけってわけじゃないんでしょうけど」
「初めは上手くいってなかった?」
「そうよ。初めはダメダメだった。けど、二度目の出撃からは良くなった」
 意味がわからなかった。死ぬのが怖いが答えなら、初めから成功しているはずだ。
「私は、なんとなく答えがわかってきた気がするわ」
「何だ、聞かせてくれよ」
「当たっている自信はないし、あっていたとしても、自分で考えなさい」
「なんだそれ」
 同じ会話を、ついさっきもした。
「そろそろ、お開きにしましょうか。いい時間になったし、彼女たちを宿舎に運びましょう」
 話を逸らされた気がするが、確かに時間も遅くなっていた。門限を過ぎることを言ってあるが、遅くなりすぎるのも良くない。
「なんとか天龍と長月は歩けそうね。二人に肩を貸すから、木曾は雷を背負ってくれない?」
「分かった」
 雷を、不知火の手を借りながら背負う。不知火が二人に肩を貸して立ち上がったことを確認して、歩き出した。
 夜風が、酒の後に気持ちが良い。
 歩き出してから一寸して、不図、途中の曲がり角の左を見た。誰かが、そこにいるような気がしたからだ。こんな夜分遅くに外を歩く人間は、早々いない。
 曲がり角の先は暗い。だが、確かに十米あたり先に、人が立っていた。身長は、私より高い。提督ほどはある。
 向こうは、空を見ているようだった。私も空を見てみる。空に浮かぶは淡い色の月。上弦の、三日月よりも更に薄い。
 視線を曲がり角の向
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