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IS<インフィニット・ストラトス> ‐Blessed Wings‐ 
序章 『交差』 ‐暴風の竜騎兵と紅の姫君‐
第2話 『紅の姫君』
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しか何かを感じられない――人の温かさも、可能性とか言われても私には理解できない、お兄さんが何言ってるのか、私には――わからない」

その時の彼女は――笑っていた。笑っていたが、目からは涙が零れていた。
感情が理解できない、わからない――それがどれだけ辛いことか、逆に俺はそれがわからない。
俺は無言で、スラッシュ状態の<フェイルノート>をコールすると

「手、出して」
「え?は、はい…」

差し出した彼女の手に、<フェイルノート>を握らせて、その手を――自分に向けた

「もし、君が殺すことでしか何も分からないというなら――ここで俺を殺せ。俺は抵抗もしないし、何もしない――それで君が満足するなら、俺を殺せ」

すると、彼女はなんとか起き上がった状態で、こちらを見ると

「お兄さんを、殺してもいいんですか?」
「それで、君が納得するなら――」

少し間をあけて、彼女は両手で<フェイルノート>を振りかぶると

「う、うわぁぁぁああ!!」

それは歓喜とも、悲痛とも呼べる叫び声にも聞こえた。
そして俺に対して――それを振り下ろした


























「…殺さないのか?」

だが、その刃は俺を殺すことはなかった。
<フェイルノート>の刃は、後僅かで俺の首を切り裂くという所で止まっていたのだ。

「できま、せん――」

ポロポロと、涙を零しながら彼女は言った

「なんでかはわからないけど、けど――お兄さんを殺したいのに、殺したくなくて――よくわからなくなって、私は――」

カランカラン という音を立てて、彼女の手に持っていた<フェイルノート>が地面に落ち、量子化される。

俺個人としても複雑な気分であった―― 一歩間違えば、俺もこうなっていたのだから。

だから俺は、ISを解除し――灰銀色のネックレスを首にかけると、上体だけを起こしている彼女を抱きしめた

「お兄…さん――?」
「そうやって、泣いたり考えたり、後悔するからこそ『人は生きている』んだと俺は思う――君は、今ここで生きている。それで――いいじゃないか」

彼女にどんな悲惨な過去があったかは知らない。けれど――今ここで、何もかもが分からなくなって足掻いているのは、先程までの『殺人マシーン』ではなく――『一人の女の子』なんだと、そう思った。
彼女は『壊れている』のではない。壊れていたら、今の状況にはならなくて――あの刃は、俺を殺していたと思うから。
単純に不器用で、『自分がよく分からなくなっているだけ』なのだ、彼女は。

「えぐっ…ひぐっ…お兄さん、私は――」
「落ち着くまで、こうしてろ――俺みたいな奴でよければ、だけどさ――」

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