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【IS】何もかも間違ってるかもしれないインフィニット・ストラトス
役者は踊る
第十一幕 「オルコット家の家庭の事情」
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念を抱かせた。―――母は、私を愛してなどいないのだろうか?
思い返せば母が誰かに優しくしているところ等見たことがない。明けても暮れても仕事だ何だで、母の笑顔を見たためしがない。手料理も食べたことがない、寝かしつけて子守歌を歌ってもらったこともない、私を誇ってくれたこともない―――
ああ、何だ。母を尊敬するというのは、つまりこんな温もりの無い無感動な人間になるという事だったのか。自分の母親とは、当たり前の愛情すら持っていない存在だったのか。
その結論に達してからセシリアの世界が一変した。あれほど尊敬してやまなかった母に対する思いは、もはや冷め切って飲む気にもならない紅茶のように変貌した。
あんな冷たい女を才女だ理想の女性だと担ぎ上げ
囃
(
はや
)
し立てている人間がすべて愚かに見えた。自分に対して一々口出ししてくる母がひどく疎ましげに思えた。今まで必死に淑女たらんとしてきた過去の自分がひどく滑稽に思えた。私はその頃から、オルコット家の誇りを捨てた。目に見えて素行の悪くなる私を母は叱り、時には手をあげられることさえあった。しかし私は何をされても謝る気になれず、何をされても母には従わずに反抗的な目で睨み返した。
次第に大人という人間すべてが愚かしく見えてくる。学校でも威張り散らすだけで大して頭のよくない教師に反抗的な態度を取っては問題を起こした。だが、奇しくも幼い頃から真面目に母の英才教育を受けていたセシリアの成績は飛び抜けて優秀であり、更にオルコットの名まで出されては殆どの教師がしり込みをした。―――これが大人か。子供を導くはずの大人が、こんな小娘を恐れて何も言ってこないのか。能力さえあればお前たちはいいのか。セシリアの不信は次第に大きくなっていった。挙句の果てには未だ貴族制を取っている母国さえ穿った目で見るようになる。そしてとうとう私は母と口をきくことさえ止めた。逆に、私がどんなに荒れていてもずっとやさしく語りかけてくれた父とは、少しではあるが口をきき続けた。男としては情けなくとも親であることに真摯だった父を、私は少しだけ認めることが出来た。
ISに乗り大した愛国心もないのに代表候補生になったのも、IS操縦者ではなかった母へのあてつけだった。自分は貴方の思い通りにはならないという、いかにも子供らしいつまらない反抗心だった。
だが、ISの世界は悪い事ばかりではなかった。オルコットの名を気にせず指導をしてくれる先輩や教官たち。男女の差など気にせず機体について語らう研究者たち。そして、空を駆ける事の解放感。セシリアの知らない世界がそこにあった。
―――いつか、性別も人種も国籍も重力も、すべてのしがらみから解放され、“宇宙”を飛びたい・・・そんな漠然とした夢を抱いた。
だからIS学園へ来た。ここに居れば鬱陶しい母も口を出せない。私は自分
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