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【IS】何もかも間違ってるかもしれないインフィニット・ストラトス
役者は踊る
第十一幕 「オルコット家の家庭の事情」
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出し目を細める。

母は、一言でいえば“強い女性”だった。貴族の家柄であり才色兼備、女性でありながら会社の経営などもこなし、いつでも誇り高い女性(ひと)だった。かつてはその姿にあこがれ、逆に母の顔色ばかりうかがう父のカルロには辟易していた。ISが世に放たれてから父の肩身はさらに狭くなり、子供心にあんな男を婿にしたくはないと思ったものだ。
だが、いつからだろう。憧れだったはずの母を嫌いになったのは。

あれは確か私が12歳くらいの頃。その日の夜、怖い夢を見て目が覚めた私は無性に一人が寂しくなり、父と共に出張中だった母に電話を掛けた。だがそんな母から帰って来た言葉は“そんなつまらない事のために電話をかけてきたのか”という冷たい返事だった。母は元々規律や素行に煩い人であったため、幼いセシリアはショックを受けたものの、忙しい母に電話を掛けた自分が悪かったと自身を納得させた。
そしてその翌日、連合王国中に衝撃が走る大ニュースがセシリアの耳に飛び込んできた。越境鉄道の横転事故――聡い彼女はその列車が両親の乗っていたはずの列車であることにすぐ気が付いた。そして、生存者0という余りにも残酷な数字の意味も。セシリアは泣いた。愛する母を、尊敬はしていなかったが決して嫌いではなかった父を同時に亡くしたという現実に耐え切れず、泣いた。
だから、父と母が列車に乗り遅れたおかげで事故を免れているという情報を聞いたとき、セシリアは人生で初めて本気で神に感謝した。セシリアはうれし涙を流しながら、帰って来た母へと跳びついた。

「お母様――!!よく・・・良くご無事で――」
「――カルロ、セシリアの面倒を見て頂戴。私は少し疲れたから休ませてもらうわ」
「えっ?お、お母様・・・?」
「お、おいセラ!?いくらなんでもその態度は・・・行っちゃったよ。ゴメンなセシリア、セラもいろんなことがあっていっぱいいっぱいなんだと思うんだ」
「・・・・・・お母様」

目を合わせようとさえしなかった。自分があれだけ心配したにも拘らず――自分が生んだ、実の娘の目さえ見ようとしなかった。あと少しで自分が死んでいたにも拘らず、娘との再会をまるでどうでもいい事のように受け流した。その事実が、セシリアの心に小さなヒビを入れた。そして、ヒビはあっという間に大きな亀裂になり、母を見る目が急激に変わり始める。
考えてみれば、母はいつも出張や仕事で余所へ行ってばかりで、母親らしいことをしてもらった記憶は碌にない。家でもマナーがどうのとうるさく言うことはあっても褒められたことなど記憶になく、褒めてくれるのは父だけではなかったか。母が目に見えて“愛情”というものを見せてくれたことなどあったろうか。
たった一つの不信。それが、今まで尊敬の対象というフィルターでぼかされていたセラフィーナという人物に大きな疑
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