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Fate/stay night -the last fencer-
第一部
それぞれのマスターたち
穂群原学園(U) 〜パニックソニックデッドコースター〜
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。
凛の足音も、ガンドの発砲音も聞こえない。
その状況を訝しむ。
一度動いてみようと一歩踏み出そうとした瞬間────教室が外界から切り離された。
「っ、まずい……!」
閉じ込められた上、防音まで敷いてやがる!
さっきまで凛が撃ち放っていたガンドは、恐らく魔術刻印に記録された魔術。
詠唱を必要としない、魔力を奔らせるだけで起動する術式だ。
だが今、教室の外で、凛は呪文を詠唱している。
つまりそれは、今までとは比較にならない魔術を発動させるということだ。
たぶん、詠唱完了までは20〜30秒。
その短い間に、俺も自らを守る魔術を行使せねばならない……!
「────────」
上着を脱ぎ、腰に巻き付ける。
腕の稼働に邪魔な袖を一気に肩まで捲り上げた。
魔術を行使する上でも、布の感覚は集中を妨げる要因となる。
己が魔術刻印を起動させる。
俺自身の戦闘意思に呼応して、魔術回路を循環する魔力が共振する。
「なっ…………」
手首から肩口にまで刻み付けられた魔術刻印を目にし、士郎が絶句している。
確かに他人からすれば、気持ちの悪いものかもしれない。
一般の人間が全身に刺青が入った者を見たときのような感じだろうか?
だが今はそんなことはどうでもいい。
刻印が勝手に発動する魔術。
主が防衛思考をしているからか、あらゆる災禍から身を守る為の術式が奔る。
身体強化、各部硬化、思考加速。
防刃防弾、耐地・耐水・耐火・耐風・耐空。
反縛、隔光、影封じ、不干渉、耐圧障壁、精神防壁。
これらの上で前方に障壁を展開、自身に向けられた魔術を遮断する。
「士郎、何が起こるかぐらいはわかるだろう? 自分で対処するか、俺の後ろに隠れるかはおまえ次第だ」
「っ────」
幾ばくか思考した後、俺の後ろでさらに机を盾に床に伏せた。
俺を防波堤に、流れ弾に対する盾も用意したなら、士郎が傷を負うことはないだろう。
息を殺し、士郎はそのときを待っている。
(ああ。隠れること、守られることで傷つくようなチャチなプライドは持ってなかったか。
この場を凌ぎ切るならそれが最適解だぜ、衛宮士郎)
魔術師としては未熟だが、戦う者としての覚悟、危機回避に対する判断は本物だ。
こちらが完全防衛態勢に入ってから数秒。
嵐のような魔術の掃射が、教室内を蹂躙する────!
「くっ……」
さすがは凛だ。
俺も居ることを懸念してか、かなりの威力の魔術を雨霰と連続解放する。
貫通効果を付与したものもあるのか、時折障壁を透き通って俺に直撃していく。
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