暁 〜小説投稿サイト〜
おいでませ魍魎盒飯店
間幕:Ir de tapas (軽食屋巡り)
Diolch i'r byd / 世界に感謝を
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それだって自分の力ではなく神様からの借り物であるし、出来上がる料理の味もキシリアには遠く及ばない。
 努力はしているつもりなのだが……

 ――そう簡単に同じになられてたまるか! とはキシリアの弁だが、やはり目標があまりにも遠いというのは精神的に(こた)えるものがある。

「カリーナ。 朝食が出来るまで時間があるからお使いを頼んでもいいか?」
 ふと、食材の在庫をチェックしていたキシリアからそんな注文が飛んでくる。
 できれば一人で部屋にでも困りたい気分だったが、頼みを断れるような身分でもなく……
 それに、外を歩くのも気分転換にはいいかもしれない。
 もしかしたら、それが目的でわざと仕事を回したのかも……いや、それは考えすぎか。
 そもそも自分にそれだけ気を使う価値があるとも思えない。

「……はい」
 先刻言われたとおり少しでも元気よくと思って出した返事だが、どうにも歯切れの悪い音しか出ない。
 もしかしたら、自分にはもうこんなしゃべり方しか出来ないのではないだろうか?
 別に生まれつきこんなしゃべり方だったわけではないのだが……やめよう。
 このことに考えすぎると、クリストハルトが気を病んでしまう。

「スクマ・ウィキが切れたから、朝のうちに収穫しておいてくれ」
 告げられた食材は、ここから徒歩で30分ほど離れた草原にしか生えていないちょっと苦味のある作物だった。
 ドライアド達に頼んでキャベツという作物を生み出す過程で生まれた薬草だが、キシリアの知識の中にほぼ同じ味と成分の食材があったためにそのまま名前を貰ってきたらしい。
 またの名をケールと言い、キシリアの故郷にあるアフリカと呼ばれる地域でよく食べられているのだとか。

 ちなみに、名前の意味は"この週を耐え抜く力"。
 その薬効の強さと安価であることから、過酷な労働者がその週を生きるための力となるが故につけられた名前らしい。

 ――そういえば、最近この森のあたりで強盗が出るという話だっけ。
 それは昨夜の夕食時に、クリストハルトから聞いた話だった。
 魔界と呼ばれるだけあって、この"モルクヴェルデン"に強盗罪や傷害罪は存在しない。
 ただあるとすれば、"弱いヤツが悪い"という獣のような恐ろしい概念だけである。
 別に全く法が無いわけではないのだが、その内容は利益の絡む民事法ばかりであり、刑法に関しては国家反逆罪がかろうじてある程度。
 仇討ちの類は勝手にやれというスタンスだ。

 そもそも犯罪の定義があまりにも違いすぎる。
 この世界の食事と言うのは基本的に狩猟であり、戦争ともなれば同じ同族同士でも捕食の対象となるのだから、誰かが殺し、殺されるなんて話は当たり前に転がっているのだ。
 クリストハルトの友人である獣人たちも
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