第一章 土くれのフーケ
第七話 未知数の実力
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もうっ、こんな顔して……そんなに楽しかったの?
食堂で見せた怒りは何処へ行ったのやら、ギーシュの顔を見ながら幸せそうに顔を綻ばせているモンモランシーに士郎は顔を寄せると、茶目っ気たっぷりに囁いた。
「いくらギーシュが大好きだからとは言え。ワインをぶっかけるのはやりすぎだぞ」
「―――なっ! ちっ違う、好きなんじゃないっ!」
モンモランシーが、ギーシュに聞かせまいと頭を両腕で抱えこみ、体ごと左右に振って否定するのを見て士郎は笑いを噛み殺す。
「あれは確かにギーシュが悪いが、馬鹿な男を許してやるのも、いい女の条件だぞ」
「だっ、だから好きなんじゃないって」
必死に否定するモンモランシーに背中を向けた士郎は、笑い声を上げながら観戦していた生徒たちに向かって歩き出す。近づくと一斉に道を開けた生徒たちの閧通り、士郎は悠々とウェストリの広場を去っていった。
「……余裕で勝ちましたね」
「ふむ、そうじゃの。それも、全く実力を見せずに……の」
士郎とギーシュの決闘の様子を学院長室の鏡で確認したオスマン氏とコルベールは呆然とした顔で呟いた。
士郎が強いということは、その身に漂わせている雰囲気で何となく分かっていたオスマン氏たちでさえ、まさか、メイジの中では一番下の『ドット』とはいえメイジを唯の木の枝1本で倒してしまうとは、さすがに想像の埒外であった。
オスマン氏は腕を組み顔に刻まれた皺を更に深くしながらコルベールに尋ねる。
「そう言えば、ミスタ・コルベール。最初に君がミスタ・シロウを保健室に連れて行った時、ミスタ・シロウに“ディテクトマジック”をかけてみたかね?」
「えっ、ええ。保健室で寝ているシロウくんに“ディテクトマジック”をかけたことがありますが。それがどうしましたか?」
コルベールの言葉にオスマン氏は目を光らせる。
「それで反応はあったかね?」
「え? ま、まあ、有りましたが。とは言っても調べてみると、シロウくんが着ていた外套から反応があっただけで、シロウくん本人からは反応は有りませんでした」
「ふむ……彼自身からは魔力の反応は無かったと。それで、彼はその外套のことは何と?」
「確か……知り合いから貰ったとかなんとか」
「誰とは言わぬか。まあ良い……ふむ、しかし本人から魔力の反応は無かったか。……ウムムム、ムゥ〜」
コルベールの話を聞いたオスマン氏は、ますます難しい顔をして唸った。
「あの、オールド・オスマン。どうかしましたか?」
「ふむ、ミスタ・コルベール。先ほどの決闘でミスタ・シロウが持っていた木の枝、何か変だと思わなかったかね」
「変……ですか?」
オスマン氏のいきなりの問いかけにコルベールは戸惑う。
「い、いや……特
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