第一章 土くれのフーケ
第七話 未知数の実力
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不味そうに口を含み。
「それがあの……実は相手はメイジではありません。その、ミス・ヴァリエールの使い魔の―――ミスタ・シロウのようです」
―――ブバフッ!―――
「なっ、なんじゃとっ!」
「それは本当ですかミス・ロングビルっ!」
オスマン氏は飲んでいたお茶を勢いよく吹き出すと、同様に驚いたコルベールと一緒にロングビルに詰め寄る。
「は、はい。そ、それで教師たちは、決闘を止めるため“眠りの鐘”使用を求めているのですが」
ロングビルの言葉にオスマン氏の顔が苦渋に歪む。
「ふむ。しかし決闘騒ぎを止めるのに秘宝を使うのものぅ。使う使わないはともかく、一応広場の周りに教師を集めておきなさい」
「分かりました」
ロングビルの遠ざかる足音を確認した後、コルベールは恐る恐るオスマン氏に向かって口を開いた。
「それで、その、オールド・オスマン……大丈夫だと思われますか?」
「分からん。じゃが、あの男は無闇に人を傷付けるとは思えんしの。あの男の力を見る、いい機会かもしれん」
オスマン氏はそう言って杖を振るう。すると、壁にかかった大きな鏡にヴェストリ広場の様子が映し出された。
―――そっ、そんな馬鹿な。当たるどころか、かすりもしないだって!?
何時もは閑散としたヴェストリ広場は、奇妙な熱気と共に騒然とした空気が満ちていた。
広場にいる者の殆んどが、憐れな平民がギーシュにぼろぼろにされるものと予想していたが、いざ蓋を開けてみると、ぼろぼろにされているのは貴族のギーシュの方であった。
もちろん、貴族とて完璧ではない、特にギーシュはメイジの中では一番下の“ドット”のメイジである。隙をつかれて反撃を受ける可能性は高く、見物に来た者の多くは、反撃を受けたギーシュを笑ってやろうと思っていたのだが、今、目の前で起きていることはそんなものでは決してなかった。
圧倒的強者であるはずのメイジが、ただの木の枝を持った平民に言い様にあしらわれているのだ。
「これで四十九」
ヴェストリ広場に本日四十九回目のパンッ、という快音がギーシュの頭から響くと、とうとうギーシュは地面に崩れ落ち座り込んでしまった。それを見て笑う者は誰もいない。
それも無理はないだろう、ただの木の枝とは言え、音が広場に響く程の勢いで、何度も同じ箇所を寸分たがわず叩かれているのだ。大の大人でも耐えきれないだろう。むしろ、ギーシュはよく頑張った方である。その証拠に周りの誰もがギーシュを笑っていない。
「ハアッハアッ……」
地面に両手と膝を着いているギーシュの頭上から士郎は声を掛けた。
「どうする? まだ、続けるか?」
最初と同じように木の枝で肩を叩きながら問うてくる士郎に向
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