第一章 土くれのフーケ
第七話 未知数の実力
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シーと呼ばれた少女は、その訴えに対し近くにあったワインのビンをギーシュの頭の上で逆さにするという形で答えた。顔どころか全身をワインで濡らしたギーシュに対し、モンモランシーは背中を向け怒りに震えた声で応えた。
「ッこの嘘つきっ!!」
食堂を震わせる怒声を浴び、シュンっ、と身を縮こまたギーシュを置いて、食堂を後にするモンモランシー。一人残されたギーシュは、ハンカチで顔と髪に付いたワインを拭き終えると、芝居がかった仕草でぐるりと周りを見渡した。
「は、ハハ……こ、これは参ったね。あのレディ達は薔薇の存在の意味を理解していないようだ」
まるで去っていった彼女たちが、重要な真実を知らないといわんばかりの態度をとるギーシュの姿に、食堂の生徒達は呆れ返った。
すろと、他の者と同様に呆れた顔を浮かべていた士郎を、突然ギーシュが睨みつけてきた。
「っ、分かっているのか! 君の取った軽率な行動のおかげで、二人のレディの名誉が傷ついたんだぞ。一体どうしてくれるんだ」
その言葉に士郎の顔に苦笑いが浮かぶ。
「は? いや、どうと言われても」
「いいかい給仕君。ぼくは君が見せてきた瓶の事を無視しただろ。事情を察して話を合わせるぐらいの機転があってもいいだろう」
「あ〜……。まぁ、二人の女性と付き合うこと自体には、俺にとやかく言う資格はないが……悲しませるのはどうかと思うぞ」
「ふ、ふん、偉そうに。君にそんなこと言われてもね。ああ、そうか君は……」
ギーシュは馬鹿にしたように鼻を鳴らした。
「確か、あのゼロのルイズが呼び出した平民だったな。平民に貴族の機転を期待した僕が間違っていたよ。ゼロのルイズの使い魔は、しょせんその程度のものだよね」
先程まで困った顔をしながらも、何処か微笑ましげに見ていた士郎の目が、一瞬にして変わった。目つきが鋭くなり、ザワリと周囲の気配が蠢く。周りにいた者たちは、漂い始めた剣呑な気配を感じ取ったのか、じりじりと士郎たちから離れていく。
だがしかし、明後日の方向に顔を向けて、こんこんと芝居がかった言葉を続けるギーシュは気付いてはいなかった。
「―――魔法の使えないゼロの使い魔も、やっぱり使い魔としての実力がゼロとは、はぁ、本当に困ったものだね」
「―――なら、確かめてみるか?」
「え、なんだって?」
ギーシュは振り返ると戸惑うように目を瞬かせた。
「俺の使い魔としての実力がゼロかどうか。自分の身を持って確かめてみるかと聞いている」
「ふんっ、そんなこと確かめなくても十分に分かってるさ」
胸に挿している薔薇を手に取り左右に振りながらギーシュは答えた。
「―――怖いのか」
「なに?」
「俺と戦うのが怖いのか」
ギーシュの目が光
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