第一章 土くれのフーケ
第七話 未知数の実力
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ぼくはそんなものし、知らないぞ」
「いえ、確かにあなたが落とされるのを見たんですが……」
見間違いはしてない。しかし、本人が否定しているのだし、どうしたものかと考えていると、士郎が結論を出すよりも早く、ギーシュの友人が瓶を取り上げ声を上げた。
「おい。これモンモランシーの香水じゃないのか? うん、この瓶の色は間違いないね。んんっ? という事は君。もしかして今モンモランシーとつき合ってるのかっ!」
「ちっ、ちちち違う。っっ、い、いいかい。彼女の名誉のために言っておくが―――」
ギーシュが何か言い訳しようとしたところ、突如後ろのテーブルに座っていた茶色のマントを羽織った少女が立ち上がった。ギーシュの席に向かって、コツコツと早足で歩いてくる栗色の髪の可愛らしい少女。
その少女から発せられる剣呑とした空気を感じ取った士郎は、本能的に非常に危険な事態が起こっている事を直感した。
士郎はその無数の修羅場の経験から、文字通り身に染みる程理解していた。ああなった女性は酷く恐ろしく、そしてこちらの言い分を全く聞かないと言うことを。
「ギーシュ様……やっぱり、あなたはミス・モンモランシーと……」
「ッけ、ケいティッっ?! ちちちち違うんだだだよ。かっ、か彼等が勝手に誤解しているだけで、ぼ、ぼくくはは―――」
ガクガクと明らかに挙動不審な行動を取るギーシュであったが、パンッ、という甲高い音に停止される事になった。
ケティの平手がギーシュの頬を打ったのだ。
「―――ッ、その香水があなたのポケットから出てきたのが何よりの証拠ですっ! さよならっ!!」
涙を流しながら、ケティという少女は食堂から飛び出してしまう。去っていく少女の背中を、はたかれた頬を撫でながら呆然と見送るギーシュ。
―――だが、彼の女難はまだ終わっていなかった。
その光景を一部始終見て立ち上がるもう一人の女生徒。見事な巻き髪の女の子である。いかめしい顔つきで、かつかつと甲高い靴音を響かせながらギーシュの席までやってくる―――と。
「ごっ、誤解だモンモランシー! 彼女とはただ、ラ・ロシェールの森へ遠乗りをしただけでっ、何もやましい事は一つも、その無いと……うん、なかったよ」
うんうんと激しく頭を上下に振りながらも何とか目の前の少女を説得しようとするギーシュ。本人は冷静なつもりなのだろうが、口調は明らかにどもっており、顔面には冷や汗が伝っていた。
「―――やっぱり、あの一年生に手を出していたのね」
「は、はは……。おっ、お願いだ。ぼくの麗しの“香水”のモンモランシー。咲き誇るその薔薇の様な顔を、そ、そそっ、そのような怒りで歪ませないでおくれ。ぼくまで悲しくなるじゃな―――」
モンモラン
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