第一章 土くれのフーケ
第七話 未知数の実力
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に変とは思いませんでしたが。いたって何処にでも落ちているような普通の木の枝に見えましたが」
「確かに普通の木の枝じゃろうの。たがのぅ。考えても見てみよ。あれだけポンポンと人の頭を叩けば、普通の木の枝ならば直ぐに折れてしまう筈じゃろ?」
机の上にある筆を上下に振るう仕草をオスマン氏がすると、コルベールは手を叩き納得の声を上げた。
「ああっ、言われてみると。確かに普通は折れてしまうと思いますが……ならば何故、シロウくんが持っていた木の枝は折れなかったのでしょうか?」
コルベールの疑問にオスマン氏が不敵に笑う。
「あるじゃろう、ただの木の枝をそう簡単に折らずにおける方法がの」
「え? あっ、ああっ! “固定化”だっ!」
コルベールの理解の声に、オスマン氏も頷いて同意する。
「その通りじゃ。ものの状態を固定する『固定化』ならば、唯の木の枝であろうと、そうそう折れはせん」
その言葉を聞きコルベールがハッとした顔をして、オスマン氏に詰め寄ってきた。
「そっ、それではオールド・オスマン。まさかシロウくんは……」
「うむ……メイジではないかと疑ったのじゃが。“ディテクトマジック”に反応が無いとしたら違うんじゃろうな」
詰め寄ってきたコルベールに、予想が外れたことに気を落とした様子のオスマン氏が手に持った筆を左右に振って答える。
「そう……ですね」
オスマン氏の言葉に頷いたコルベールに、オスマン氏は窓から太陽の位置を確認する。
「ミスタ・コルベール。もうすぐ君の授業の時間だろう、そろそろ教室に行きなさい」
「あっ、はい。そうですね。それでは私はこれで失礼します」
「うむ」
オスマン氏に言われて、授業がまもなく始まることに気付いたコルベールは、オスマン氏に挨拶をして学院長室を慌ただしく出て行った。
コルベールが学院長室を出て行き、一人椅子に深く座り直したオスマン氏は、天井を見上げながらポツリと呟く。
「エミヤシロウ……彼は一体何者なんじゃろうな?」
今分かっているのは、せいぜい“ドット”メイジでは軽くあしらわれるほどの実力者であるということぐらいかの……。
士郎の正体を考えながら、オスマン氏は士郎と話しをした昨日の夜を思い出していた。
あの胆力、眼光、冷静さ……歴戦の戦士どころじゃないの……。
そこまで考えたオスマン氏は、机から水キセルを取り出してプカリと煙を吐き出すと、開いた窓から吐き出した煙が空に溶けていく様子を眺めながらポツリと呟いた。
「ま、何はともあれ、今はまだまだ様子見かの……」
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