第一章 土くれのフーケ
第七話 未知数の実力
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が、お昼に少し人手が足りなくなるかもしれないんです」
「ああ、そのぐらい問題ないな。明日の昼だけでいいのか?」
「はい。十分です」
シエスタのお願いに士郎は快く頷いた。
明けて次の日のお昼。授業が終わり、食堂へと向かうため教室を出ようとするルイズに、昨夜のシエスタとの一件について説明し、ちょっと手伝いに言ってくると伝えたところ。何故かルイズは不機嫌になるも、『別に好きにしたら』との許可が貰えたことから、士郎はシエスタの手伝いのため食堂へと向かった。
そんな理由で今。士郎は“アルヴィーズの食堂”にいた。ちょっとした体育館並の広さがあるだろう“アルヴィーズの食堂”の中を、デザートのケーキがずらりと並んだ大きな銀のトレイを片手に、本職のウエイトレス並みの動きで、何十人もの食事を取る貴族の間を泳ぐように移動しながらケーキを一つずつ貴族たちに配っていく士郎。その余りの早業は、メイドたちが思わずその熟練の技に見惚れていた僅かな時間で、割り当てられたケーキを全て配り終えてしまう程であった。
全てのデザートを配り終え、手持ち無沙汰になった士郎は、他の手伝いにでも行くかと辺りを見回していると。とあるテーブルに、金色の巻き毛にフリルのついたシャツを着た、見るからにキザなメイジの姿が目に入った。
薔薇をシャツのポケットに挿したそのキザな貴族を、何やら周りの友人が口々に冷やかしている。
「なあギーシュ。お前、今は誰とつき合ってるんだ?」
「つき合う? はは、残念ながらぼくには特定の女性は出来ないんだ。ほら、薔薇は多くの人を楽しませるために咲くものだろ。ぼくが誰かのものになってしまったら、多くの女性が悲しみの余りに命を絶ってしまうからね」
前髪を払いながら聞いてるこちらが恥ずかしくなる言葉を外聞なく大声で口にしている、どことなく昔の悪友に似ている気がすると感じる少年―――ギーシュを見ていた士郎は、そこで偶然ギーシュのポケットからガラス瓶が落ちる瞬間を目にする。
床は絨毯が敷かれていたため、衝撃と共に音も吸収したことから、会話を楽しんでいたギーシュは、自分のポケットからガラス瓶が落ちたことに気付いていないようであった。
「失礼ですがミスタ。こちらを落とされましたが」
自然と足が動いた士郎が声を掛けながら落ちた瓶を差し出すが、ギーシュは差し出された瓶をチラリと見るも、何の反応もせずそのまま周囲の友人との会話を続ける。
妙だなとは思いながらも、親切心でもう一度尋ねる士郎。
「これはあなたのものでは?」
周りの視線が集まり始めると、流石に無視することが出来なくなったのか、ギーシュが渋々といった様子で士郎に顔を向けた。
「さ、さっきから君は一体なんなんだい? ぼ、
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