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男女美醜の反転した世界にて
反転した世界にて8
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差し出して、自分でも驚くほど自然な笑顔で以て、言う。

「行こう?」
「ぁ、ぅ、うんっ!」

 白上さんは鞄を手繰り寄せながら慌てて立ち上がると、僕の手を掴んでくれた。
 ――して、おげちゃ女子たちの方へと振り返る。彼女らは一瞬だけ肩を震わせたかと思うと、そそくさと僕たちの通り道を開けた。
 爽快な気分になってしまった僕は、相当に嫌な奴かもしれないけど。

「じゃあね。さようなら」
「……うっ、……く」
 
 憎々しげに僕と白上さんを睨んでいるおげちゃ女子の顔を見て、そんな気持ちも薄まっていく。心の底では納得をしていないのか、それとも公衆の面前で恥をかかされたのを根に持ってしまったのか、それは定かではない。
 ――この時、多少なりとも後が怖いなぁと、考えなくもなかったのだけど。
 結果的には、彼女たちが僕や白上さんにちょっかいをかけてくるということは、二度となかった。
 理由はまた今度ということで。
 少なくとも今は、おげちゃたちのことを考える必要はない。

 ――こうして、僕は、“白上さんと初めて手を繋いで帰宅する”という、快挙を成し遂げたのだった。


 ◇


「……」
「……」

 駅までの道のりを、白上さんと肩を並べて歩く。
 昨日までとは違って、校門を出てから、未だお互いに一言も喋っていない。あと、手。プラプラと、白上さんの細くて柔らかな左手が、僕の右手に包まれている。

 冷静になって反省すると、さっきのはない。よく知らない他人に対して、ああも怒りを露わにしてしまうなんて。
 それも、教室のど真ん中で。来週からどんな顔をして学校に行けばいいんだろうと、今後のことを考えて気分が落ち込んでしまいそうになる――というのが、まあ、三割くらい。
 そんなことよりも。白上さんの手がヤバい。柔らかくて暖かくて細すぎ。
 ちょっと力を籠めたら折れちゃいそうとか、この距離だとシャンプーの香りとか、そのほか女性的な芳香が鼻腔をくすぐってクラクラするというか、制服越しに盛り上がって、歩くたびに揺れているバストがどう見てもノーブラだったりとか。横目に映るポニーテールとうなじが艶やかすぎてたまらんというか、僕はこんなにも興奮極まっているというのに、白上さんは薄く頬を赤くしているけれど、どこか余裕がありそうな表情で、薄く笑みを浮かべているだけだったりとか。そんな横顔も妖美で可憐でエトセトラ……。

「あのさ」
「っ! な、なに?」

 不意に、白上さんは前を向いたままで口上を切った。

「さっきはありがとね。私のために怒ってくれたんでしょ?」
「い、いやぁ……あはは、」

 どう、なんだろう。よくよく考えてみると、僕自身、なんであんなにも頭に来たのか、よくわからない。
 しかし、“なに
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