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男女美醜の反転した世界にて
反転した世界にて8
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は、白上さんには聞こえていないかもしれない。しかし、そんな楽観的な想像も期待できないくらいには、おげちゃ女子たちの声はデカい。むしろ、白上さんに聞こえるように、わざと声を荒げているのだろう。そうとしか、思えない。
 
「あとは、赤沢さんがちゃんと断ってあげれば、それで終わりだからさ」
「今まで辛かったでしょ? もし、またあのもやし女がなんか言っても――」
「うるさい」

 ――思えば。
 僕が心底“キレて”しまったのは、堪忍袋の緒がそのあまりある怒りに耐え切れず、文字通り“プッツン”といってしまったのは、生まれてこのかた初めてのことだ。
 
「なに余計なことしてくれてんのさ。僕、キミらと喋ったことないよね。誰がそんなわけわからんこと、白上さんに伝えてくれって頼んだのさ」
「あ……う……」

 どこか心の片隅で、ちょっとヤバいかなぁなどとは思ったけれど。しかし、回り始めてしまった僕の口車が、留まるところを知らない。
 先ほどまでとは一転して、急に口の滑りが悪くなるおげちゃ女子たち。
 ――これは後から聞いた話なのだけれど、この時の僕はびっくりするほど恐ろしい形相をしていたのだとか。“美人()が怒ると怖い”というのは、価値観が違っていても適用される法則だったことが証明された。

「あ、あたしらは、赤沢さんのことを思って……」
「あっそう。じゃあもういいよおげちゃ」
「お、おげ……!?」
「僕はこれから白上さんと遊びに行くので。僕なんかに気を使ってくれなくても結構です。というか構わないでほしいです」

 普段、人見知りをしすぎるこの僕が、こんなにもペラペラと口をきけるだなんて。自分でもびっくりだし、周りも同様に驚いているようだ。
 ――ところが得てして。プッツンして見境のつかない状態というのは、好ましいとは言い難い。

「本当に僕のことを思ってくれるなら、もう話しかけないでほしい。あと、白上さんにもちょっかいをかけないでくれると最高」

 むしろ、出来るだけ避けるべきものなのだ。だって、

「白上さんは僕のことが好きで、僕も白上さんのことが好きなので。WINWINで、相思相愛なので。キミらにとやかく言われる筋合いはこれっぽっちもございません。この話は終了ですね」
「――」
「――」
「――」

 言わなくてもいいことまで、口の制御が効かずに飛び出してきてしまうものだから。
 ――正直、この辺りで怒りのピークは通り過ぎていて、“やっちゃった”という気持ちが心境の大半を占めていたのだけれど。まだ勢いだけは残っていたので、
 
「白上さん」
「は、はいっ!」

 僕は呆然として固まってしまったおげちゃ女子たちを尻目に、白上さんの名を呼びながら彼女の元へと向かった。
 白上さんの目の前に右手を
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