第67話
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彼らは現在、自分達の息子も参加する開会式の会場へと、のんびり足を運んでいる。
「母さん、それが「近」未来と呼ばれるのはまだまだずっと先の時代だろう。
高熱源ブレードぐらいならこの街にはありそうだが・・・まぁ、物騒な話はやめにしよう。
こういう雰囲気は良いものだ。
壊すのは無粋というものだろう。」
空を見上げれば、ポンポンと白い煙だけの花火が上がっている。
所々に飛んでいるヘリコプターはマスコミのものか。
大覇星祭は一般にも開放され、テレビ局の中継も許可されている。
競技場には解説席が設けられ、街のあちこちには野外スタジオが臨時で建てられている。
その視聴率はワールドカップに匹敵するほどなのだから、彼らも必死なのだろう。
そんな夫婦の前を、何者かが横切った。
ドラム缶のような自立警備ロボットの上に、メイド服を着た少女がちょこんと座っている。
彼女は野球場の売り子のように、お腹の所で支えたトレイを、首の後ろに回した紐に固定しながら言う。
「あー、あー、メイド弁当、学園都市名物メイド弁当はいらんかねー。
繚乱家政所女学校のメイド弁当、より正確にはメイド見習い弁当はいらんかねー。」
あまりの売り文句に唖然としている二人の前で、メイドを乗せた自立警備ロボットはスーッと音もなく右から左へ走り去っていく。
詩菜は、あらあら、とほっぺたに片手を当てて言った。
「学園都市って色々な学校があるのねぇ。」
「まぁ世界中のあらゆる教育機関を凝縮さえたような場所だからね。
世界各国の家政学区の技術知識だってあるんだろうさ。
しかしメイドが街を歩いていても違和感のない風景ってのも恐ろしいものだな・・・っと。うわっ!?」
集中を欠けていた刀夜は、うっかり誰かと激突した。
「きゃっ!って、すみませんぶつかっちゃって。」
告げたのは、見た目大学生ぐらいの女性だった。
淡い灰色のワイシャツに、薄い生地でできた漆黒の細長いパンツ。
デザインはシンプルだが、一目で高級ブランドの匂いを感じさせる一品で、この格好なら社長室の椅子に座ってもおかしくない印象すらある。
だが、衣装に反して中身に堅い雰囲気はなく、むしろ不良少女が無理矢理着ているような印象があった。
いつもだらけたスーツのまま社運をかけた取り引きに向かう刀夜とは対照的な女性だった。
「いや、これだけ広いと迷ってしまいしますよね。
失礼ですけど、常盤台中学ってどの辺にあるかご存知ですか?」
「はぁ。
ちょっと待ってください。」
刀夜はゴソゴソとパンフレットを取り出す。
学園都市は広大で参加する学生の数も半端ではないため、ちょっとした海外旅行用のガイドブックのような厚みがある。
「とき、とき・・・ないなぁ。
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