第三十話 少年期L
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「いやぁ、それほどでも」
「おい、なんの話だ」
店主さんと同じような表情を俺も作る。それに不気味そうに怯むエイカ。本日エイカをこのお店に連れてきた真の理由が、今明かされる。
「わかっているさ。お前さんが……新たなる布教者だろ」
「――やばい。俺が知らない間に何かにカテゴライズされている」
「こーら、逃げない逃げない」
店主さんの言葉を聞き、すばやく逃走を謀ったエイカ。そこは逃亡するだろうとわかっていた俺が襟首をつかんで確保したけど。ぐほォッ!?、という声が店に響き渡った。
その後に涙目で頭をはたかれたが、とりあえず説明を試みてみた。最初は猫のように毛が逆立っていたエイカも、俺の説得に少しずつ落ち着きを取り戻していく。どうやら話を聞いてくれるようにはなったみたいだ。
「……つまり布教っていうのは、要はこの店の宣伝をしろってことか」
「そうそう。俺ここでバイトしているんだけど、人手不足だからさ。エイカも一緒にやらないかなーと思って」
この前子ども達とやった遊びも布教の一環だった、と告げると遠い目をされた。全力を出すと決めたからには俺はやるよ。現在のターゲットは子どもに絞り、認知度の底上げを目指している。子どもが釣れれば親が釣れる。まさに芋づる方式。せこい? 給料かかってんだよ。
それに実際人手不足も事実である。店主さんからも事前に布教者が増えることに賛同をもらっている。あとはエイカをここに連れてきて話を聞いてもらおうと思っていた。エイカの事情はわからないけど、俺なりに何かフォローできないかと考えて思いついた方法。
無理強いをするつもりはない。でもエイカの中の選択肢を広げることはできる。そんな風に思って。
「ふーん。というかなんでわざわざ俺なんだよ」
「いやさ。せっかくだったら友達と一緒にやりたいなーって」
「うっ。そ、そんな理由かよ」
声が上擦ってますよ、エイカさん。意外に直球とか予想外のことに弱いよね。反応が面白いからそのままでいてほしいところです。それにしても、やっぱり声をかけて正解だったかも。1人より2人の方が効率もいいし、俺も楽しいし。素晴らしきは友情だよね。
「ん? そんな理由だったのか。俺はてっきり前に新しいバイト員紹介したら、紹介料として給料上乗せしてやるって言ったのが理由だと思っていたんだが。前にアル坊、友達に流されやすいのが1人いるって言っていただろ」
「…………」
待ってエイカさん、マウントはまずい! この体勢は俺にも周りの目にも非常によろしくないからッ!! あと超いい笑顔で笑わないで! 友人の初笑顔という心温まるシーンがこれってないよッーー!?
******
「えーと、とりあえず。エイカ的にはバイトはど
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