第三十話 少年期L
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きゅうや』である。店主の趣味が暴走してできたお店なので、店主の影響がもろに現れる。音楽にはまっていた時は表にレコードやらが並び、漫才にはまっていたら小道具が置かれ、プチ漫才大会がなぜか店先で行われる。
簡単に言えば、店の前を見れば店主が現在はまっているものがわかるのだ。時々とんでもないものが置かれていることもあり、驚いた地域住民が管理局に通報してしまったこともしばしば。でもめげない店主。法律に引っかかりそうな物は、置かないように気をつけてはいるらしい。
「けど面白いものもここにはいっぱいあるんだぞ」
「お前の言う面白いものは、店先に置かれている5メートルはありそうなサメの模型以外にもあるのか」
それを肯定できてしまう悲しさ。店先に置かれているサメを俺も眺める。絶対映画ではまったんだろうな、店主さん。本当どこの世界に、店の前に巨大なサメのオブジェを飾る所があるんだよ。ここサメ専門店じゃないだろ。海も特に関係ないだろ。遊園地じゃないだろうが。これ設置した時、絶対どや顔だったんだろうな。……うん、実は俺も結構混乱していたみたいだ。
さすがにこれは撤去されるんじゃね。通行人ビビっているし、なにより通行の邪魔だ。どうやって設置したのか気になるが、ここファンタジー世界だしな。やり方も人物もぶっ飛んでいてもおかしくない。
「って、おい。やっぱり管理局員来たじゃねぇか」
「あ、本当だ。――あれ? あの人どっかで見たことが…………あ、くまさんだ」
「……お前、絶対背丈と色でそれ決めただろ。そのあだ名」
エイカは同情の眼差しをくまのお兄さんに向けた。
「あ、サメ見て驚いている」
「普通あんなのあったら驚くだろう。……恐る恐る触りだしたな」
「未知との遭遇だね。お、デバイスで撮影しだした。しかも辺りを見回してから記念にツーショットも撮るとはなかなか」
「お前知り合いなんだろ。声かけないのか」
「俺は今見守り精神に目覚めているから」
エイカはさらに憐憫の眼差しをくまのお兄さんに向けた。
「こんにちはー、店主さん」
「おぉ、アル坊か」
その後、公務を思い出したらしいくまのお兄さんが店に入り、店主と話をして帰っていった。さすがに通行人の心の平和のために必要なので、撤去をお願いしたらしい。店に売られていたサメの映像記録を、ひっそりくまさんが買って帰ったところまでじっくり眺めてから、俺たちは店に入った。仕事中だったし、挨拶は後日でいいだろう。
店に入ると相変わらず元気そうな店主さんがいた。うん、やっぱりめげてない。俺の声に店の整理をしていた手を止め、こちらに視線を移す。すると俺の後ろにいるエイカを見つけて目を見開き、にやりと口元をゆがませた。
「へぇ、アル坊もやるじゃないか」
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