第三十話 少年期L
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俺なりに思っていたぐらいだ。その時にでも、友達作りの場をつくってあげれば大丈夫かなと考えていた。
みんな気のいいやつらだったし、俺から紹介すれば妹もすぐに輪の中に入れてくれると思う。正直それでいいかな、と俺は思いをめぐらせていた。
俺自身はアリシアにはやっぱり笑っていてほしいと思っている。過保護かもしれないけれど、そのためなら色々手も回すし、話だって通しておく。俺が常に前へ出ていれば、アリシアが傷つくことも減らせるはずだ。そんな風に俺は考えていた。……でもこれって、本当にアリシアのためなんだろうか。
「――きゃッ!」
「へっ?」
思考に耽っていた俺に小さな悲鳴が耳に入った。音の方に顔を向けてみると、妹の髪と同じ金色の髪の女の子が転んでいるのが見えた。荷物を手にいっぱい持っていたからか、受け身もとれず顔面から床に倒れこんでいる。うわぁ、あれは絶対に痛い。というかあの子ピクリとも動かないんだけどッ!?
荷物が床に散乱し、周りの買い物客も驚きに固まってしまっている。俺もいきなりのことに動けずにいたが、ふと気づくと視界にもう1つ金色を見つける。その金色の持ち主は、真っ直ぐに倒れている女の子に向かって全速力で走っていった。
「……なんか、アリシアにはいらないお節介だったのかな」
『アリシア様はお強い方です。守ってあげることは大切ですけど、見守ってあげることも必要ですよ。それに、ますたーの後ろにずっといる方でもないですから』
「うん、確かにそうかもしれないな。なぁ、荷物番お願いしてもいいか? 散らばっている荷物拾ってあげたいし、怪我をしているなら係員さんに知らせないといけないから」
『はい、もちろんですよ』
コーラルに荷物番を頼み、俺もアリシアと同じようにその子のもとに走った。いくつかの荷物は傍にいた人たちが拾い集めてくれており、俺もそれを拾いながら女の子の所に向かう。幸い大きな怪我もなかったようで、アリシアの呼びかけにゆっくりと起き上がった女の子。その後その子はあわわ、とあわてながらも恥ずかしそうに心配している妹と話をしているようだった。
最初は不安げだった妹も、その子と話をしていく内に顔の固さがなくなっていった。お互いに表情が柔らかくなり、くすりと笑いあっている。真っ赤なおでこに照れ笑いをする女の子と、その綺麗な痕に気遣いながらも吹き出すアリシア。あ、怒られてる。
ずっと俺の後ろにくっついていた妹。俺が守ってあげないと駄目だと思っていた存在。だけどそんな関係も少しずつ変わっている。人間、ずっと幼いままでいることはない。そんな当たり前なことを忘れていた。
俺はそんな自分に呆れながらも、楽しそうに話す彼女たちの会話の中に入っていった。
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