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〜烈戦記〜
第六話 〜初仕事〜
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資料に印を押すだけだった。
まったく…。
奴は私の為なら平気で本来の規則や役目立場を超えて働いてくれる。
頼もしいというかなんというか…。

そして今やっているのは完全に別件だ。
洋班様がこられたからには私は洋班様の命には絶対に逆らえない。
そして洋班様は…あのような性格だ。
何か関内の事や規則について気に入らなければ即座に変えろと言い出しかねない。
そうなれば一番被害を受けるのはこの関で商いをしている商人達だ。
だから私はこの関で有力な商人達にあらかじめその状況を伝え、それに伴う一応の準備と注意を促す文を書いている。
本来ならこのような内部事情を晒すような事はしてはいけないのだが、彼ら商人は私がこの関に就任して以来治安や活気を出す為に色々な事に尽力を尽くしてくれた所謂仲間のような存在だ。
だからこそ私は彼らとの信用を大切にしたい。

帯よ。
気持ちは確かに嬉しいが、これは私個人の事だ。
だからお前に手伝わせる訳にはいけないのだ。


青くなった左頬の痣をさする。
痛みはだいぶ引いたが、力を加えればまだ痛む。
あいつは私に気を使わせない為に気付かない振りをしていたが、それでもやはり嘘をつくのは下手なようだ。

『…気苦労をさせるな』

私は一息ついて文書に筆先を下ろした。



父さんの部屋から一直線に練兵所まで来た。
本当凱雲を探すならまず凱雲の部屋に向かうべきなのかもしれないが、凱雲が夜以外に部屋にいるのを想像できない。
そして一番強い印象はやはり練兵所なのだ。
村にいた頃から大抵は練兵所にいたし、昨日の話でも関の兵士を束ねているみたいな事を言っていたから間違いないだろう。

だが、不思議な事に今日は訓練の時の声が聞こえてこない。
ただでさえ兵士達は休憩がもらえているのか心配になるくらい終始訓練をしているのにその気配がない。
凱雲はおろか、兵士達すら練兵所にはいないのかもしれない。
だが、ここまで来たからには中の様子を確かめずにはいられない。
僕は練兵所へと足を踏み入れた。



『…え?』

練兵所の中に入ってまず出た言葉はそれだった。
そこにはいつものように兵士達がいた。
だが、地面に座りながら何やらみんなで話をしているようだっだ。どうやら談笑ではないらしいが、もし訓練中なら凱雲から拳をもらうであろう状況が広がっていた。

だが、凱雲はいない。
訓練中ではないのか?
ならいったい彼らは兵舎から出て来て何をしているのだろうか。

『ん?あっ!おいみんな!帯坊だ!』
『あ!帯坊!』

一人の兵士が気付くとみな一斉に立ち上がり僕の方に駆け寄ってくる。
だが、いつものような雰囲気ではない。
みな思い思いな顔をしていた。
いったい何があったのだろ
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