Episode2 分岐点
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も、優しいです」
全く想定外な答えが返ってきた。会話も上手く繋がってない。だが、ぽつりぽつりと言葉を紡ぐその声は、紛れもなく俺を揺さぶっていたあの子の声だ。よく分からないが、とりあえず話を合わせてみる。
「いいご両親だね」
「お母さん、お料理上手で」
「うんうん」
「お父さん、なんでも、褒めて、くれて……」
「うん…うん?」
少女の声が揺れ始めた。グスグスという音が言葉の間に混じっている。
「いつも、『明陽は偉いな』、って、頭、撫でてくれて…うぅ…」
「あぁ…」
不可抗力ではあるが、名前が分かってしまった。この子は『アカリ』と言うらしい。もうこれでいよいよ、この子を放っておけなくなってしまった。
それにさっきまであった『私警戒してますよ!』的な空気がいつの間にかなくなっていた。
どうやら少しばかり、俺に心を開いてくれたようだ。
しかし、その先の会話が続かない。
「でも、今、お父さんもお母さんもいないよぅ…!うぅ…ふぇ…すんすん…うぅ」
必死に堪えているようだが、彼女は今泣いている。これは俺を大いに動揺させた。
子どもが泣いたときの対処法なんて知らない!ましてや女の子の慰め方なんて考えたこともない!
…なんて年下の女の子を前に情けなさ極まりない思考が俺の中を一通り廻った。ただ、廻ったあと、俺の体はビックリするくらいすんなり動き出した。
これが父性本能の為せる技なのか、俺の隠された才能だったのかは分からないが、俺の手が何もない空間に伸ばされていく。手の平にフサフサと柔らかい感覚が伝わった。それと同時に、俺の前に少女が再び姿を現す。彼女に触れたことで《隠蔽》が看破された状態になったわけだ。
歯を食いしばった少女の顔を見ながら優しく頭を撫でる。声も出来うるかぎり優しく掛ける。
「君はアカリって言うんだね。俺はカイト。…アカリは頑張ったな。一人で辛かったよな。…アカリは、偉いよ」
言い終わってから、「ヤバッ!これって《ハラスメントコード》引っ掛かるかも!」という思考が働いた。
男性が女性に一方的に接触を謀ると《ハラスメントコード》が適用され、女性側の対応次第で男は黒鉄宮と言うところの監獄に飛ばされてしまう。
今頃アカリの視界にはハラスメントコード発動を促す警告文が表示されているはずだ。
しかし、俺の手の平の下の少女はコードを発動することもなく、こちらを見ていた。しかも、いつの間にか泣き止んでいる。
潤んだ大きな瞳が俺の視線を捉える。壁の篝火の加減でその瞳は漆黒にも、燃えるような紅にも見える。
架空の物のはずなのに、何故か心拍数が上がる。
「カイトさん、って言うんですか…?」
「あ、あぁ。そうだよ」
「カイトは怖い人ですか?」
「え
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