第三章
そうして由比ヶ浜結衣は諦める。
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て! 誰?』
『……誰だと思う?』
『わっかんねーって。ヒントっ! ヒントちょうだい!』
『ヒントとか言われてもなあ』
『あ、じゃあイニシャル、イニシャル教えて。苗字でも名前でもいいから、頼むっ!』
『うーん、それならいっかなぁ』
『マジで!? やたっ! で、イニシャルは?』
『……H』
『え……、それって、……俺?』
『え、何言ってんのそんなわけないじゃん、何、え、マジキモい。ちょっとやめてくんない』
『あ、はは。だ、だよなー。ちょっとボケてみた』
『いや、今のないと思う……。――もう終わったし、私帰るね』
『お、おう……』
そうして一人教室に残された俺は夕日を見ながら涙を流した。しかも、翌日登校してみるとその話はクラスのみんなが知っていたんだ」
「……何だ。ただの比企谷か。それにしても『マジで!? やたっ!』とか無理しすぎだろ。軽く吹いたわ! うん……それにしてもこの話だけで恋愛恐怖症になるな…、聞かなきゃよかった」
「ヒッキーの話だったんだ…」
「ちょ、ばかお前。誰も俺の話とか言ってねーよ、あれだよ言葉の綾だよ」
比企谷の言い逃れを無視し、雪ノ下は面倒そうなため息をついた。
「そもそも友達の友達、という時点でダウトじゃない。あなた友達いないし」
「なっ、貴様っ!?」
「比企谷がそれをきっかけにさらに女子から嫌われて男子からはからかわれまくり『ナルが谷』なんてあだ名をつけられた何てことは見当もつかないからどうでもいいけどさ…、結局何が言いたかったのかは教えてくれないか?」
「くっ…まぁどうでもいいよね。つまりあれだ。男ってのは残念なくらい単純なんだよ。話しかけられるだけで勘違いするし、手作りクッキーってだけで喜ぶの。だから、」
比企谷はそこで言葉を区切り、由比ヶ浜を見つめる。…さあ、俺は帰りの支度を始めよう。
「別に特別何かあるわけじゃなくてときどきジャリってするような、はっきり言ってそんなにおいしくないクッキーでいいんだよ」
「〜っ! うっさい!」
「まあ、なんだ…。お前が頑張ったって姿勢が伝わりゃ、桐山が言ったように、男心も揺れんじゃねぇの」
比企谷が言うと、由比ヶ浜さんはドアの前で振り返る。逆光で見えづらいが、少し頬が染まって見える…。
「ヒッキーは、家庭的な女の子がいると喜ぶんだよね? 桐山くん」
まさか、な。……って、ん?
「……え、俺? え、まあ超揺れるんじゃね。比企谷のことそこまで知ってるわけじゃないが…。うん、揺れる。揺れるよ。みんな揺れる。いやー、由比ヶ浜さんに掛かればいちコロだよ、いちコロ。軽く比企谷の二〜三匹はいける!」
「ふふっ、ありがと♪」
……はい、俺史認定。
俺がグッドトリップしていると雪ノ下が帰ろうとする由比ヶ浜さ
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