第三章
そうして由比ヶ浜結衣は諦める。
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あんまり覚めた目で見んなよ。…まあ、それにしても流石だな、このクッキー由比ヶ浜が作ったやつだってどうして気づけたんだ?」
「……あたしも不思議。どうしてわかったの、って……え?」
やっぱアホの子だな。そうだアホヶ浜ちゃんだ! やーい、やーい♪ ……自分で言っといて難だが何が楽しいのやら。
「こんな言葉がある……『愛があれば、ラブ・イズ・オーケー!!』」
比企谷が素敵スマイルでぐっとサムズアップしてきた。……キモッ!
「古っ」
由比ヶ浜さんが反応する。―え、古いんだアレ。ネタだと言うことにすら気づかなかったから余計キモかった。……ごめんよ比企谷。あれはキモイ。
「素敵な笑顔だったぞ比企谷。……で、結局どう言うことなんだ? わかりやすくまとめてくれ」
「え、ああ、おお…!お前らはハードルを上げすぎてるってことだ。…それに、そいつが四年かけてやったことを一日でやるのはいくら何でも無理がある」
比企谷は得意気に言い放つ。…なに優越感に浸ってやがる! 速くしろ! ……比企谷は「素敵な笑顔、か…。そうなのか?」と呟いたあと、すらすらと言葉を発する。
「フッ……。ハードル競技の主目的は飛び越えることじゃない。最速のタイムでゴールすることだ。飛び越えなきゃいけないってルールはない。ハー ――」
「言いたいことはわかったからもういいわ」
「――ドルをなぎ倒そうが吹き飛ばそうが下を潜り抜けようが構いやしない、と続けようとしたんだね。わかります」
「へぇー…で、どうゆうこと?」
アホヶ浜ちゃん再来。
「今までは手段と目的を取り違えていたということね」
「ああ、せっかくの手作りクッキーなんだ。手作りの部分をアピールしなきゃ意味がない。店と同じようなものを出されたって嬉しくないんだよ。むしろ味はちょっと悪いくらいのほうがいい」
「ああー、それもそうだな。つまり、例えば雪ノ下さんのクッキーはおいしいけど手作り感が足りなくて、由比ヶ浜さんはクッキーがおいしくないからって頑張りすぎるとせっかくの手作り感を失ってしまうことになるのか…」
「……と、言うことは味は悪い方がいいの?」
雪ノ下は納得がいかない様子だ。そりゃあ上手な自分の手作りクッキーが「あんなの商品」みたいなこと言われたら、ねぇ…?
「雪ノ下のクッキーはおいしかったし、手作りなのは知ってたし、まあ嬉しかったが上手にできなかったけど一生懸命作りましたっ! ってところをアピールすれば、『俺のために頑張ってくれたんだ……』って勘違いすんだよ、悲しいことに」
「よくわかったよ、比企谷。でも雪ノ下さんが悪いわけでもないな。『料理が得意な娘なんて……ああ、毎日この娘の手料理を食べていたい。っていうかこの娘をいただいてしまいたいっ…!』って思わせられるもんなぁ…」
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