暁 〜小説投稿サイト〜
やはり俺達の青春ラブコメは間違っている。
第三章
そうして由比ヶ浜結衣は諦める。
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、ちょっと前に話したカレーの少年が少し成長してから作ったものと同じレシピなんだ。…もちろん彼のことだ。最初から成功するはずない。今から言うのは、彼の失敗談だ…」
「……」
 俺は軽く俯きながら話を始める。

「最初はオーブンで焼くことを知らず電子レンジにクッキーを乗せた皿を入れ、二十分と材料費を無駄にした。二度目はオーブンの使い方がわからず、電源を何とか入れてもタイマーの機能を知らず、冷たい箱に天板を入れ、また二十分、材料費を無駄にした。取り扱い説明書を三日かけて探し、三度目にしてようやくオーブンを扱うことが出来たが、さも当然のように焦がす。材料費がなくなり挫折。正月が来て復帰し二〜三度焦がしたあと、やっと綺麗に焼き上げたが塩とコショウを間違えていた。当然のように塩も使わないレシピ。気づくのに三日かかる。でも、また挑戦。間違えて塩を入れる。三日後に砂糖だったことに気づく、挫折。そして、バターとチーズを間違えたり、アーモンドとピーナッツを買い(ちが)えたりして、ようやく数年後食べれるレベルになった。ちなみに材料費うんぬんは全額 僕負担」
 俺はため息をついたあと、顔をあげた。

「壮絶ね。努力してそれだと、もはや才能がないの域を越えているわ」
「ああ、作ろうと思い立ったのは小学三年、完全に出来上がったのは中学一年だ」
「単純計算で四年か……普通ならパティシエになる勢いだな。…なあ、その彼ってやつ、何でそんな頑張ったんだ?」
「さーあ、自分の努力に価値があったからじゃね? 正直、俺にはもうよくわかんね♪」
「はあ……そうっすか」
「だから諦めちゃいけないぜ由比ヶ浜さん。君なら彼が数年かけてやったことを数ヶ月でできるはずさ。君は砂糖とコショウの区別くらいつくだろ?」
「う、うん…」
「だから是非とも彼を嘲笑ってくれ。君に良い言葉を教えるよ『上には上がいる』って知ってるでしょ? つまり、自分のほんのちょっと上にいるやつを引きずり下ろして、その屍を踏み台にして上に臨もうって言葉何だけどさぁ…」
「何を言うかと思えば、最低ね…」
「最低だって!? 『白色と黒色のその間には無限の色が広がっている〜♪』というフレーズを知らんのか! たどり着きたい、その上ってやつと自分との間にはいくつもの中途半端があって、それを引きずり下ろして目標へたどり着こうという希望を連想できる言葉なのに…! 最近はMr,チルド(めん)を知らない奴までいるのか……終わったな、日本」
 …主に音楽業界。確かにCD離れはキツいよね。

「終わっているのはあなたの脳味噌じゃないのかしら?」
「くっ、現代っ娘め…。ごほん、つまりだね由比ヶ浜さん。君は少しずつ努力して少し上の彼らを踏み台に進めば良いということさ…。だから油断するなよ。『彼は立ち止まった君を踏みに
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