第三章
そうして由比ヶ浜結衣は諦める。
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俺はボウルにスライスアーモンドを入れ、それをゴムべらで混ぜ合わせる。
オーブンシートを敷き詰めた天板に満遍なく生地を流し込み、それをオーブンに入れた。―そして今ちょうど二十分が経過したところである。…そろそろいいかな、と思っていると向こうでゴソッ、と音がした。どうやら雪ノ下雪乃が目を覚ましたらしい。
俺は急いでオーブンから天板を取り出す。…フッ、上出来だ。
「あら、ナッツ系の匂いがするのだけれど、これはアーモンドかしら?」
「ああ、よくわかったね。…まあこれは簡単なアーモンドクッキーだけどさ」
俺は雪ノ下の方に歩み寄りながら自分の持っている天板に並ぶクッキーに目線を落とし、雪ノ下の問い掛けに答える。
「そうかしら。案外手が込んでいるように見えるのだけれど。……はぁ、手際が見られなくて残念だわ。まったく、どうして気を失っていたのかしら?」
俺はその言葉を聞くなり目前のテーブルから由比ヶ浜さんの作ったクッキーを皆から見えないようにどかした。…常人には余りにもデンジャラス過ぎるな…これ。食べなれていた俺だから軽い立ち眩みで済んだけど、まだ雪ノ下や比企谷には食べさせられないかもな。確か俺が最初にクッキー作ったときも自分で全部食ってたし…。
うん、今思うと流石にあの調味料はなかったな…。
「私が負けるわけにはいかないわ。こちらも仕上げに取り掛からないと…」
はいはい負けず嫌い乙。でもまあ、その手技だけは見させていただくか…。
―程なくして二人のクッキーはそれぞれ美味しそうに出来上がった。
× × ×
二人がようやく目を覚ました。由比ヶ浜さんはアホなので某一存のロリ生徒会長のごとくぴんぴんしていた…が、比企谷の方は虚ろな目で口に水を運ぶ動作だけを繰り返していた。…なにこれこわい。
「うん、怖いな。とりあえず、どうすれば効率よく美味しいクッキーが作れるようになるか二人で考えてみたら?」
「その流れからして あなたも考えるべきではないの?」
「うん…でも高校生の考える解決方法なんて限られてるし」
「まず、由比ヶ浜が二度と料理をしないことだと思うが?」
「ぜ、全否定、された? ……ヒッキーに?」
「だってあんな劇薬だぞ!? 気絶するなんて実際起きたらさすがに笑えねぇっての…」
…うん、比企谷? 口からぼたぼた水が垂れてるんですけど…、何? お前 顔だけ麻痺でもしてんの? 見てて怖いんだが?
「確かに解決方法として考慮するべきかもしれないわね…」
「そ、それで解決しちゃうっ…!よね…。あ、ははは、何か早かったなぁ。…よく考えれば最初からそうだったんだけど、やっぱあたし料理に向いてないんだ。ほら才能ってゆー
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