10日間の小さな行軍記
行軍4日目〜前編〜
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でも、あと6日とないこの旅路の間だけでも、俺はこの子達に楽しい思いをしてもらいたかった。まさか夜に少し面白い話をするだけで子供たちがこんなにも精神的に元気になるとは思ってもみなかったが、今朝の子供達には確かに笑顔が少しだけだが見られた。
「やるじゃんタイチ」
朝食を摂っているとシュナウドがニヤニヤしながら言って来た。多分今朝の子供たちのことを言っているのだろう。
「はっ、大学教授の話術がこんな所で役に立つとはな」
「ダイガクキョージュ?」
言うとシュナウドがオウム返しで聞いて来た。やはりこの世界には大学に相当するものががないのだろうか?
この世界の学力水準がますます分からなくなる。学者は存在するのに大学は無い。多分頭のいい奴が集まる研究機関的なモノがあるのだろうが、その下地の知識はどこから得ているのだろうか。
「先生の事だよ。俺は昔は教師をしてたんだ」
実際はつい最近まで教師だったんだがな。
「教師ッ!? な、なんでそんなにスゴイヒトが傭兵なんかやってんだよ」
「スゴイヒトかどうかは分からんが……ま、家庭の事情ってヤツだ」
無駄な事を考えていても仕方がない。という事はこの数日間で学んだ。だが考える事は止めない。
ここで生きて行くためには考える事と考えない事のバランスが重要だ。
「面白い転落人生だな」
「今からはい上がるんだよコノヤロー」
どうやら、やはりこの世界で教師と言うものは結構な立場らしい。そして傭兵は「転落人生」と評されるような職みたいだ。
というかシュナウドの印象も随分と変わった気がするな。最初は口内炎にでもなっているのかって程に何も話さなかったのに、今では向こうからガンガン話しかけて来るし。
口内炎、コイツが出来ちゃうと話すだけでも口の中が痛いからね。
まぁシュナウドも楽しそうだし、俺としては嬉しい限りなのだが。
そうして歩くうちに段々とシュナウドが無言になって行き、俺はある異変に気付いた。
「おいシュナウド、なんか変じゃないか?」
「え? タイチもそう思う?」
さっきからあまり喋らないと思ったら、どうやらシュナウドも異変に気付いていたみたい。
「うん、だって……」
そう言って俺は街道の道を指差す。
このアロン街道を先行しているはずの先遣隊の馬の蹄鉄の跡が、気付けばいつの間にか失くなっていたのだ。
これはまずいんじゃない? 先遣隊に何かあったとしたら、これは2度目の戦闘を視野に入れなくてはならないという事になる。
「これは後続と合流した方が良いかもね」
シュナウドが俺に言った。
俺達の行軍は、行軍とは言っているがそんなに規則正しい隊列を守っている訳ではない。
要
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