第6話 顕われたのは黄泉津大神の眷属ですよ?
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刹那。小刻みな震動を続けていた祠に次の変化が訪れた。手を翳しただけで、青年が一切触れる事の無かった祠の扉が徐々に開いて行き……。
その扉の奥から漏れ出して来る、先ほどまでよりも濃い霧。
此の世と彼の世の境界線を示す天之狭霧神が、更に濃く広がり行き、そして……。
この祠が、……扉?
その場に存在した大方の人間が、そう考えた刹那!
祠の震動が更に激しく成る。それは、最早、立って居られないレベルの激震!
そう。祠の震動が洞窟全体に共鳴現象を起こし、周囲を閉ざす壁。いや、大気すらも揺らし始めていたのだ。
そうして、次の瞬間。
世界に、ひびが入った。
そうとしか表現出来ない現象が世界に走ったのだ。
その瞬間が、世界が引き裂かれた瞬間で有った。
「何か居る」
縁間紡が我知らず、そう呟いた。
一瞬の眩暈にも似た衝撃が身体を貫き、世界が変わった瞬間。紡たちが見つめて居る祠の更に霧の向こう側。自らが立つ洞窟内の広間に等しい場所から、やや上り坂になった先に突如現れた巨大な岩。
そして、その向こう側から覗く一対の瞳……。
その瞳が、一同。そして、祠に手をかざす青年の順番に視線を移して行った。
正に、その刹那。
「仕事は終わったか?」
この異常事態を引き起こした謎の東洋的笑みを浮かべた青年の背後に、新たな登場人物が顕われていたのだ。
その青年。見た目は十人並みの容姿。紡や一誠が知って居る現代社会。それも、日本でならば、街へと出て行けば……。いや、学校へ通うようになればクラスに一人や二人は存在している目立たない少年と青年の狭間の存在。つまり、黒髪、黒い瞳。服装に関しても、祠に何らかの術式を行使して居た青年とほぼ同じ物。ただ、最初に顕われたイケメン青年がバンダナを付けて、収まりの悪い前髪を整えて居たのに対して、彼はそのまま。やや、伸び掛けた前髪が、その額を隠していた。
ただ、その両手に革製のオープンフィンガーグローブと言うタイプの、指先を露出した形の手袋をしている点のみが、その青年の特徴と言えば特徴で有った。
そして、その雰囲気さえも、この異世界……根の堅州国が境界線の向こう側からあふれ出して来た場所で有るにも関わらず、一般人としての雰囲気以上の物を感じる事はない。
そうして、祠の封じを破る事により異界を溢れさせた青年から、それ以外の人間たちにその視線を移す青年。
その新たに現れた青年を見つめる一同。帰せずして、その一同と青年の視線が霧に覆われた世界の中心で交わった。
その瞬間。少しため息にも似た様子で息を吐く新たに顕われた特徴のない青年。そんなひとつひとつの所作からも、不自
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