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大魔王からは逃げられない
プロローグ
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「そうですね。一昔前は冒険者や王国騎士、勇者などが頻繁に迷宮の攻略に挑んできましたから」


「ああ、懐かしいね。迷宮の設備を整える間もなく波状攻撃を仕掛けられたこともあったっけ?それがもう百年も昔の話か。時が経つのは早いものだ」


 ため息とともに書類にサインを書いて印を押す。


「侵入者がめっきり減ったのもバルハルト国とレナード国が建国したからだっけ?」


「はい。いわば三竦みのような関係ですね」


 抑揚のない声で肯定するメイドさん。


 地下迷宮のアリアードは広大な面積を誇る巨大なダンジョンで、その入り口となる場所は丁度三国のど真ん中に位置している。


 バルハルト国とレナード国が建国する前は迷宮の入口の周辺にはミーディア国しか存在しなかったため、一国で迷宮を制覇してその財宝や地下資源を我が物にしようと画策していた。


 しかし、バルハルト国とレナード国が出来上がってからはアリアードを独占させないように互いが睨み会う関係となり、膠着状態となってしまった。


 また、ミーディア国は幾度にも及ぶ敗北により出来立てほやほやの弱小国家にも迂闊に手を出せないほど国力が疲弊してしまった。


 そんなこんなで、最近では国属ではないフリーの冒険者しか迷宮に訪れる者はいないのだ。


「冒険者といっても精々がBランク。第五層すら突破できずに全滅することが多いからね。最下層にたどり着ける者が現れるのは一体いつになるやら」


 俺の前に現れた冒険者も今では八十年も昔の話だ。地上で三国が膠着状態となってからはめっきり人が現れなくなってきた。


 暇は人を殺すとは本当のことだと染々思うこの頃だ。


「シオンー。何か面白い情報ないの〜?」


「面白い情報ですか……そう言えば一つだけありましたね」


「おお! それでそれで、一体なんなの?」


 手を止め俺は隣を振り向く。興味津々の様子で目を輝かせる主にメイドさんはため息を吐いた。


「西方のコルドヤード付近に新たなダンジョンが生まれました。生まれたばかりなので平面階層ですが、まだ踏破した人はいないようですよ」


「ほうほう、新たなダンジョンか!」


 この世界には多数のダンジョンが存在する。俺が拠点としている迷宮はここも含めて四つ確認されており、小さな迷宮も合わせれば百ものダンジョンが存在すると言われている。


 そして不思議なことに、迷宮には最奥部もしくは最深部に核となるモノが存在する。いわば迷宮の心臓のようなものだ。迷宮の心臓である【迷宮の指輪】を手にした者がその迷宮の支配者となる。


 どういった仕組みかは知らないが、【迷宮の指輪】はまるでゲームのよ
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