1話
1話 リンネ 3
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こういう事も何度かありましたし。」
そう言いながらも赤くなった頬を両手で押さえ、視線の定まらない柚子葉。うーむ、相変わらず初心すぎる反応に将来が心配になってしまうな。
「とりあえず行くか。そろそろ予鈴もなるだろうし。」
「うん。はい、隆明君。おにぎり作ってきたから食べながら行こう。」
カバンからラップに包まれた二つの大きな球体を渡される。時間に余裕がある時はこうやって朝飯まで用意してもらえるのは俺にとってとてもありがたいものだ。
「すまんな、いただきます。」
頬張りながら一緒に屋上を後にする。着替える必要もないし、荷物は教室へ置きっぱなしなのでおにぎりだけを持って階段を下りていく。
おにぎりは薄めの塩で中に練り梅が入っており、俺好みの味だった。流石は10年近く続く幼馴染、
色々と把握してもらえているのはありがたい。
「おいしい?今日はちょっと味が薄いかと思ったんだけど。」
「いや、美味いよ。寝起きだしこれくらいの薄さでちょうどいい。」
「それは良かった。また作ってくるね。」
「おう、サンクス。いやはや、柚子葉はいい奥さんになるだろうな。」
柚子葉の頭を撫でてやる。べとべとするのでもちろんおにぎりを触っていないほうの手で優しく、ゆっくりと。
「そ、そうかな?」
俺の撫で撫でを振り払うことなく、優しい笑顔を向けてくる柚子葉。容姿端麗、気配り上手で料理も上手いとなると、やはり学園内で人気が出るのは当然である。先程から通りすがりの生徒から殺気のこもった眼で睨まれているのは仕方のないことだろう。
「お前ら相変わらず仲がいいな。だがここでイチャイチャするんじゃない、空気が悪くなる。」
職員室のある校舎から出ると、後ろから声をかけられた。振り返るとそこには、白衣を羽織り、タイトスカートを履いた女性がこちらへ向かってきている。
ぼさぼさの茶髪を手櫛で整えつつ、もう片方の手は火のついた煙草を掴んでおり、眠たそうに欠伸をか
いていた。
「別にイチャイチャなんてしてないぞ?望ちゃん。」
「隆明君、先生に望ちゃんは……。」
苦笑いをしながら咎めてくる柚子葉を望ちゃんは一瞥し、こちらを見据る。寝起きもあるだろうが三白眼なので迫力が凄い。
「放課後なら望ちゃんでも構わんが今はちゃんと三間坂先生と呼べ、浅葱。」
煙草をふかし、煙を俺の顔に向かって吐き出してきた。
「げほっ……悪かったよ三間坂先生。てか生徒に向かって煙を吐くんじゃねぇよ。」
「そもそも職員室以外は禁煙ですよ先生。」
「堅いこと言うなよ笠井、先生ってのは意外と大変なんだからこういう息抜きがあってこそ続けられるってもんなんだよ。なぁ浅葱。」
馴れ馴れしく肩に手を回してくると
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