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〜烈戦記〜
第五話 〜討伐令〜
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して治安向上の為に行った周辺の賊に対する討伐を行った事があった。
その頃は関外では賊の根城は幾つもあり、それはそれは大変であった。
その掃討作戦の時に出会った賊の一団なのだが、この時に豪統様は意図的にこの賊を見逃したのだ。
理由は『彼らは更生の余地がある』とか。
実際他の賊とは違い、私服を肥やす為に活動しているわけではなく、村を上げて国の重税から逃れる為に徒党を組んだ一団なのだ。
その為、豪統様は掃討作戦が大方片付いた時に税などを公平に戻し、国への帰順を促した。
しかし彼らは帰順を望まず、独自の自給自足を望んだ。
理由としては国がまだ信用できないだとか。
そこで豪統様はこの一団に対してある約束を交わされた。
その約束と言うのは自分が関将である内は村の独立を容認する。
その代わり、他の村々への盗賊行為の禁止といつでも安心したら帰順しろという、まともな官士が聞いたら頭を抑える程に甘ったれた約束だ。
私も当時は反対したが、豪統様は聞き入れず『善政によってあの一団を解体する事を目標にする』と突っぱねられた。
そしていつの間にか近隣の村々ではあの村の事を独立の象徴と言うようになっていた。
最近ではあの一団の構成員の数は次第に減少しているらしく、残っている人間も独立の象徴として一団を存続させているに過ぎない。

…確かに害をなさないのだから賊では無いのかもしれない。
しかし、彼らに犠牲になってもらわねば我が国はそれ以上の虐殺をしなければいけない。
その事は豪統様も分かっておられるのでしょう。
だが、その優しさからいざと言う時に決断ができない。
…だからこそその辛い決断は私が引き受けましょう。

『…私は彼らを守ってやれないのか?』
『はい、全ては多くの民草の為に…』

自分で言っておいて反吐が出る言葉だ。
民を犠牲にしておいて何が民草の為か。
だが、私はそれでも言い切らなければいけない。
…すまない、村の民よ。

『…』
『…では私はこれより兵の受け入れの為に準備をします。豪統様は部屋でお休みになっていて下さい。』
『…すまない』
『いえ。…私が言うのもどうかとは思いますが、心中お察しします。』
『…ありがとう』

そう言うと豪統様は豪帯様に近寄る。

『…帯。辛い思いをさせてしまってすまないな』
『…』

豪帯様は一旦ふさぎ込んだが直ぐに顔を上げた。
そして。

『僕は大丈夫だよ。父さんもあまり無理はしないでね』

ぎこちない笑顔でそう答えた。

そしてそれを聞いた豪統様は豪帯様を力一杯抱きしめていた。
抱きしめられた豪帯様は今にも泣いてしまいそうだった。


後の事は兵士達に任せて私は内宮を後にした。



兵舎へ向かう為、政庁の出口へ向かう廊下で私はあの二
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