五十三 一尾VS九尾
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風で砂の手裏剣を吹き飛ばす。我愛羅の【砂手裏剣】がナルに突き刺さる寸前、扇で風を巻き起こした彼女は声を張り上げた。
「止めろ、我愛羅!この子だけは…っ」
「……テ、テマリ姉ちゃん…?」
我愛羅を戦々恐々と見ていたテマリ。だが木ノ葉の中で唯一気に入っているナルだけは見殺しにする事が出来なかった。故に思わず飛び出してしまったのだ。
ナルを庇った姉の姿に、我愛羅の機嫌が益々悪くなった。必死で宥めようとするテマリ目掛け、尻尾を振り上げる。
「邪魔するなあアァッ!!」
「…がっ!」
弟からの一撃をテマリは防げなかった。吹き飛ばされた彼女が木に衝突する直前、今度はナルがテマリを受け止めた。気を失ったテマリをそっと幹に寄り掛からせて、キッと我愛羅を睨みつける。
「な、なんてことするんだってば!姉ちゃんなんだろ!?」
ナルの怒声にも我愛羅は表情一つ変えなかった。気絶したテマリに冷たい視線を浴びせる。
「姉?俺にとってそんなものは意味が無い。家族などというのは憎しみと殺意で繋がる…ただの肉塊だ」
淡々と告げられた一言に、ナルは愕然と我愛羅を見た。彼女の驚きに満ちた表情を冷やかに見下しながら、我愛羅は言葉を続ける。
「…俺は母と呼ぶべき女の命を奪い、この世に生まれ落ちた。父親である風影によって一尾をこの身に宿し、里の最高傑作としてな…。だが結局、危険物と判断された俺はその父親に幾度も暗殺されかけ、世話役にも殺され掛けた」
そこで彼は双眸を閉じた。無表情だが、凄まじい過去の回想に耐えているようだとナルは思った。
「俺は生まれながらの化け物だ」
ぽつりと独り言のように呟かれた一言が、ナルの全身を一気に貫いた。
(………わかるってばよ)
ナルは我愛羅の眼を覗き込んだ。人の姿からかけ離れた彼の瞳は憎悪に満ちている一方、その実とても寂しそうだった。
怯えた猫が毛を逆立てているような。そんな表現が当てはまった。
(……お前の気持ちは痛いほど、わかるってばよ)
心中呟く。噛み締めるように呟いた言葉は我愛羅に届かない。そう理解してはいてもナルは彼に伝えたかった。それでもきっと今の我愛羅では伝えるどころか聞こえもしないだろう。
なぜなら彼は未だに孤独という地獄に囚われているのだから。
砂に捕まっているサスケと倒れ伏しているサクラ。それに自分を庇って気を失ったテマリ。三人を背にしているナルは逃げられない。
だがそれ以上に、目の前の我愛羅を置いてゆく事など彼女には出来なかった。此処で逃げたりしたら、彼の言い分を肯定してしまう事になってしまう。
間違った思考で生き続ける我愛羅は一生孤独から脱け出せないだろう。
先ほどからず
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