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珠瀬鎮守府
木曾ノ章
その4
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ったので投棄せず、近づいていきます。
 雷撃戦にて勝負を決めますが、最後はギリギリでした。正直に言いますと、あの場で最後に木曾の魚雷が重巡に当たらなければ、私たちは誰かを失っていたと思います」
「そう、大変だったわね」
 こういう時に、この言葉を使う人は多いと思う。だが、彼女の言葉は重たかった。彼女も、このような経験を何度もしてきたから。
「提督の言っていたとおりですね。このままでは、誰か沈みます。申し訳ありません。それを防ぐために、私がいるのに」
 私は彼女たちが沈まぬように、この艦隊にいるのだ。
「謝るのはこっちよ。私のわがままで、あなたはそこにいるのだもの」
「ですが」
「それに、今、彼女たちが生きているのはあなたのお陰よ。間違い無くね。ありがとう。けど、確かにこのままでは、誰かが沈むわ。早急に、何か策を講じないと」
 頭を悩ませるのは、そのことだった。彼女たちは沈む。提督が言っているように、時間がないのだ。その前に彼女たちを説得できなければ、また繰り返す。
「また一年は、辛いですね」
「私もよ。今回何もできない私が言うことでは、ないでしょうけどね」
「提督は、もしかすると彼女たちを使わないつもりかもしれません」
「数は多いほうがいいのだけれどね。沈むならいないほうがいいという判断かしら」
「そうかもしれません。そうして、もう時間はありません。新しく艦娘を呼ぶのも難しい。そうして、木曾たちが消えた穴は、大きい」
「ええ、だからどうしようかしらね」
 会話が切れる。思えば、鳳翔さんとこんなに長く話したのは、久しぶりかもしれない。
「私も、参加しましょうかしら」
「駄目です」
 即答した。この問答は、これが初めてではない。
「あら、なんでかしら」
「私はあなたを信じていません」
 嘘だ。彼女とは、二年前からの知り合いだった。はっきりというが、木曾よりも信用と信頼をおいている。彼女のそれと同格なのは、提督くらいだ。
「それでも、戦いたいわ」
「信じていませんよ。私も、提督も、そして、第四艦隊も」
 鳳翔さんは、黙した。彼女は、提督の秘書艦だ。秘書艦は、普通第一艦隊旗艦が務める。彼女も例外ではなく、第一艦隊旗艦だった。一度も出撃したことがない艦隊。あの日と同じように、ただ一人の艦隊。
「第四艦隊の皆も、あんまり顔を会わせてないわ。嫌われているのかしらね」
「彼女たちは鳳翔さんも知っている通り、演習と、提督の後輩に指導。空いた時には、遠征で勘を鈍らせないようにしています」
「そうだったかしらね」
 鳳翔さんは、また外に目を移した。ともに戦えないことを、なんと思っているかはわからない。
「じゃあ、できることをしないといけないわね」
「? はい、そうですね」
「私が、木曾を説得するわ」
「それはいいか
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