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珠瀬鎮守府
木曾ノ章
その4
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な意味を持っていたのか。響は、帽子で目を隠した。



 ドアを二度、叩く。
「響です」
 何時かの夜の繰り返し。そうして、これはこのひと月の間、出撃の度に繰り返した。
「どうぞ」
 嗚呼、今回は、鳳翔さんしかいないのか。初めの夜は、確かどちらもいた。
 いつもどおり扉を開ける。鳳翔さんが、明かりのついていない部屋に佇んでいた。窓から入る月明かりが、彼女を暗闇にぼおっと映し出している。
「提督はいらっしゃらないのですね。それと鳳翔さん、灯りはつけましょう」
「ああ、ごめんなさい。月を、見ていましたから」
 そう言って、鳳翔さんは外に目を向けた。私も窓辺に近づいて、彼女の視線を追う。三日月より更に薄い月が、空に浮かんでいた。
「二日月ですか」
「ええ」
 彼女のような月だと、思った。
「響ちゃん、今日は、提督は外出しているわ。報告は、私に」
「わかりました」
 彼女に、私は敬語を使う。初めは彼女も遠慮していたが、こちらがやめないので諦めていた。
「では、早速戦闘について話します。敵艦は艦載機を有していました。索敵機を全機撃滅できなかった私たちは、進行方向にて丁字戦になることを恐れ、大きく進路を変更。後に敵艦と接敵したときは、単縦陣同士の反航戦となりました。初めは敵重巡からの砲撃。敵艦載機の座標報告による砲撃だったからか、大きく私たちの艦隊とは離れた位置に落ちます。その弾道から敵艦隊方向を予測。接近し、交戦となりました」
 一旦言葉を切って、頭のなかで文章を考える。
「続けてちょうだい」
「戦闘は、苛烈でした。重巡に対し砲撃での撃破は時間がかかるため、最初の接敵には駆逐を攻撃。敵二艦を轟沈、こちらは木曾、不知火に被弾。装甲が落ち、主砲を失います。木曾は戦闘継続が可能と判断。そこからは少々略しますが、夕暮れの時点で敵は重巡一、軽巡は中破二艦となりました。こちらは木曾、不知火、私、長月が主砲を失い、私は魚雷管を失いました。雷は装甲は健在でしたが、主砲、魚雷共に失い、全員が中破以上でした」
「そうして、夜戦になったのね」
「ええ、そうです。木曾は初めからやる気でした。私はこれに反対していません。敵艦は旗艦である重巡が生きていますし、こちらは主砲が少なかったのですから、追われたらどうしようもありませんでした。丁字戦を恐れ接敵が遅れたので、それもあります。
 夜戦に突入時、こちらは残った私が砲撃を仕掛けました。先制で、敵軽巡片方を撃破。後制の敵の砲撃は、私の主砲の一部を破壊し、長月のすぐ傍に着弾、長月は喫水下の魚雷を損傷。
 その後雷撃可能距離までは、私の片方の砲撃のみでした。敵は旗艦の木曾を狙いましたが、木曾は上手く避けました。被弾は少なかったですが、魚雷管を一つ除いて破損。彼女は誘爆の危険もありましたが、唯一の兵装だ
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