木曾ノ章
その4
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かな戦績と言ってもいい。達成感に溢れていた。いや、言い換えようか。浮かれていたと言ってもいい。
「木曾、何だそのなりは」
だから、近くに提督がいた事に、一瞬気づかなかった。
「おう、提督じゃねえか」
私より早く、天龍が言葉を返す。提督は、私から目を逸らして天龍を上から下まで見た。彼女は恥ずかしかったのか、少し顔を背けた。
彼女は獲物が中程で折れ、腕部の追加装甲は脱落。中の服が一部破けていた。至近距離を弾が通過したせいで、直撃したわけではないから怪我らしい怪我はない。
更に視線を動かして、響。彼女も一部装甲脱落、魚雷は脱落していないものの、魚雷管は運用不可の損傷。主砲は、片方が半ばから折れていた。
彼が視線をどんどん動かしていく。そうして、最後に私。
砲関係、装甲関係は全て脱落。右魚雷脱落。左魚雷管損傷、内一発発射可。だが、そこに魚雷は装填されていない。ここにあった魚雷は、敵の最後の一艦の致命打になった。
「報告」
その言葉で、はっと我に返る。そうだ、私は任務から帰ってきたのだ。
「鎮守府正面海域奥にて敵艦隊と遭遇。内重巡一、軽巡二、駆逐三。砲雷撃にて撃滅を図るも未決。夜戦を展開し、残りを撃滅しました。こちらは在籍六艦中六艦帰還。内四艦大破、二艦中破です」
「……わかった、ご苦労。全員入渠し、その後十分な休暇を取れ」
「提督、その休息ですが、今晩も頂いて良いですか」
皆と祝賀をするために、休みが欲しかった。
「休息ではない休暇だ。お前らは出撃回数が多い。これから休暇を取れ」
「え?」
「期間は未定。解かれる場合は前日に通達する。以上だ」
「おいおい、待ってくれ」
「どうゆうこったい提督」
私と、天龍が声を上げる。期間未定の休暇なんて、おかしい。それは私達を海から遠ざけているのと同義だ。
「提督は、不知火達が過労って言いたいの? 大丈夫よ、数日休めば」
「それもあるな。だが、それだけじゃない」
「じゃあ何だ。俺達は自分で言うのもなんだが、よく活躍していると思う。何が問題なんだ」
提督は、すぐに言葉を返さずに、少し悩んだ。
「沈むぞ」
そうして、静かに、その一言だけを放った。
頭のなかで、いつかの話が横切った。あれは、鳳翔さんだ。提督が鳳翔さんにただ沈むだけと言っていた。
「ただ沈むだけじゃあない。私たちは敵を倒す」
「沈んでは無意味」
そう言うと、提督は歩き出した。私達の背中に、提督が使っている建物がある。
「とりあえずは、お前らは今から休暇だ。入渠しておけ」
皆が、いや響以外の者達が不満顔で提督を見つめていた。だが、提督はその発言を覆さない。
そうして、響の傍を通り過ぎる瞬間、小さな声で言った。
「時間がない」
偶々響の傍に私がいたから聞こえたその言葉は、どん
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