木曾ノ章
その4
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。机の上には湯気の立つお茶が淹れてある。小休止のところだったか。仕事中でなくて、良かった。
「響、あいつの指揮はどうだった?」
提督は、単刀直入に話を切り出してきた。あいつとは、木曾にほかならない。
「一言で表すなら、微妙」
「具体的には?」
「木曾の指揮ですが、悪くはないです。出撃前に、皆にある程度作戦を言い渡し、きちんと調べているのでしょう、当該海域の敵編成の傾向や緊急時の行動も言い渡しています」
「問題点は」
「二つあります。一つが、実戦不足。艦隊距離や敵の反撃のタイミングの掴めなさ等です。これは致し方ない部分もあります。もう一つが、突撃肌ということです。ある程度艦隊に危険が及んでも、敵を倒すことに重きを置いて行動します。今回は殆ど無傷でしたが、冷や汗をかく場面も多々ありました」
「“特攻”肌は、回数をこなせば治りそうか?」
こちらがわざと突撃と使ったのに、提督は特攻と返したか。まぁ、そうだろう。あの戦い方は、自らを顧みない戦い方だ。後ろにいる私達はまだいいが、先頭の彼女の危険は大きい。
「難しいでしょう。何が彼女を動かすかはわかりませんが、敵に対する執着心は大きいです。彼女は敵を逃がすくらいでしたら、負傷しても狩りに行きます」
「それで自らが沈んでも、意味は無いのにな」
「ええ、全く無意味です」
「では、お前は引き続き木曾たちを見ていてくれ。辛いことを押し付けて、すまんな」
「いえ、誰かがしなければならないことです。それが偶々私だっただけ」
「分かった。じゃあ言葉を変える。ありがとな。部屋に戻っていいぞ」
「お疲れ様、響ちゃん」
労いの言葉をかけてくれた鳳翔さんと提督に頭を下げて、提督室を後にする。木曾たちに見つからない内に、部屋に戻ろう。
初陣からひと月が経った。今日は、そんなある日の朝だ。
港に帰ってきた私達は、誰も彼もが負傷していた。大小が様々。被害が大きいものだと、装甲が大きく剥がれていたり、砲塔の一部が破損、魚雷が脱落している。
けれど、皆の顔は暗くはなかった。今回は、敵は六艦。重巡洋艦一艦、軽巡洋艦二、駆逐艦三の編成。それを、私たちは夜戦にまでもつれ込み、全艦撃破した。
今から一週間前ほどに、顔を合わせたのが始めだった。あの時は昼間の砲撃戦でこちらが大打撃を受け、夜戦は響の進言により断念、結果取り逃がすことになった。今回は二度目の接敵。あれから考えぬいた作戦で、ようやく倒せたのだ。顔が暗くなるはずはなかった。
「本当に、皆良くやってくれた。提督に報告したら休みを貰って、今日は祝賀としよう」
「いいねぇ木曾、酒は好きだぜ!」
「あまり飲める口ではないが、私も混ざろうか」
「私は飲めるわよ、見てなさい!」
皆が思い思いに話しながら港を歩く。敵は重巡洋艦もいた。華や
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