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珠瀬鎮守府
木曾ノ章
その4
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「報告します。鎮守府正面海域にて、敵艦四艦、内軽巡洋艦一駆逐三と遭遇。これを撃滅、我が艦隊に損傷なし。目視圏内に敵艦不在の確認を取り、帰投しました」
 港に着き、提督に報告をと思った矢先、提督が工廠に居た。早速報告する。
「四艦と遭遇か。初の出撃にしては、負傷艦無しという功績は大きい。各艦とも十分な休息を取るように。以上だ。良くやってくれた。次回も、同様の活躍を期待している」
 第二艦隊全員が提督に敬礼し、提督がその場を去ると同時に手を下げた。空気が弛緩する。
「初の出撃、不安はあったけど無事に終わってよかったわ」
「天龍様は、不安はなかったぜ」
「提督に褒められるとは、俺たちいい働きをしたってことだな」
 各々が言葉を交わす。私以外、今回の作戦の成功を祝い、提督の言葉を聞いて気を良くしている。けれども私は、それに倣うことはできなかった。
「どうした、木曾。作戦は成功だ。嬉しくないのか?」
 響が、そんな私の様子に気づいて声をかけてきた。
「作戦成功は嬉しい。私の指揮が結果に出たということだ。ただ」
 そう、作戦成功は嬉しいのだ。ただ
「ただ?」
「提督の『負傷なしという功績は大きい』って言葉が引っかかってだな」
「何でまた」
「褒めるところは、敵艦隊壊滅じゃないのか?」
 響は、私から少し視線を外した。
「敵艦隊を逃しても、私達全員が港に帰る。それが、提督の方針」
「当たり前だ、そんなこと。ただ負傷なしって言葉が気になる。例え傷ついても敵を撃滅するべきだと、俺は思う」
「そうかもしれない。けど、響はそうしたくない。この戦いは、甘くない。安全策を取っても、負傷する。負傷覚悟なんてしたら、帰らぬ人となる」
「俺の指揮が、信用ならないのか」
「違う。今日見て、貴方の統率力や才能は認める。ただ、いつでも作戦は上手くいくとは限らない。これは、先輩としての言葉。受け取ってくれるとありがたい」
 そうだ、彼女は体が小さいが、私の先輩なのだ。先人の意見を参考にするもしないも勝手だが、蔑ろにする必要なない。
「……お前の言っている意味は、分かる。けど、敵は倒さないといけない」
 響は、少し寂しそうな顔をした。
「そう、分かった。じゃ、私は先に休息をとるね」
 言うが早いか、彼女は宿舎に走っていった。
 彼女は、恐らく過去に戦闘で何かがあったのだ。だから、慎重になっている。響にとってこの戦い方は、参加しているだけで古傷を抉る結果になっているのかもしれない。だけど、私の今の戦い方を、変えるつもりはなかった。



 ドアを二度、叩く。
「響です」
 第二艦隊帰投後の夜、私は提督室に赴いた。今日の出撃の報告をするためだ。木曾や、他の艦たちには秘密にしてある。
「入れ」
 ドアを押し開けると、提督と鳳翔さんが居た
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