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剣風覇伝
第十話「生還」
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「いや、妙に清々しい。それになんだかいままでにない力にあふれている」
それを聞くと老婆や若い娘はひれ伏した。
「な、なにをしている、やめておくれ」
「あなたは、救い主だ。我らのためにきっと何度でも蘇ってあの伯爵を打ち滅ぼしてくれる。わしらはこのときのためにいままで生きてきた。あなたは、あの伯爵を倒してくれるかい?あんな恐ろしい目にあってもまだわしらを助けてくれるかい?」
「おれは、あの伯爵というやつを許せん。あいつのそばにいる女たちはみんな、お前たちの孫か子であろう、あそこにいた全ての女たちは哀しみに満ちていた。この町を覆っているこの哀しみはすべて奴一人のせいだ。許せるものか!」
「我らにはなにができますか?」
「刀を作ってほしい。この町で作れる最高の物だ。すぐ町一番の鍛冶屋に会わせてくれ」
 三日たったあと自分の体を包む青い鎧と黒塗りの鞘に入った白く輝く刀、命名「星流れ」を携え、一番強い材料で作った弓と矢束を背負っていた。
「この鎧、つけている感じがせん。それにいやに軽い。どうなっとるんじゃ」
「それはここらで取れる青金と呼ばれる金属で作りましたのでそれにその鎧は、どんな動きをしても自由に決して邪魔をしません。タチカゼ殿の甲冑の技術とわしらの知恵の最高傑作です」
「ありがとう、わたしは刀だけでよかったのだがいろいろ世話になった」
「あの伯爵の一撃は、名だたる剣豪を一撃で屠ってきたのです、盾では防げない。だから鎧なのです。大丈夫、伯爵の剣を作ったのはわしらです。伯爵の剣はこの青金には勝てません。そういうふうにつくったからです。」
「伯爵は気づいてないのか?」
「気づいていません。これには自信があります。青金は、伯爵の嫌う銀を混ぜることによりとんでもなく強くなるのです。そしてそのことを伯爵は見抜けませんでした。なぜなら銀という金属には触ることさえできないからです。吸血鬼には銀は猛毒なのです」
あたりは、だんだん夜が明けてきて白み始めていた。
「もうじき夜明けです、明るい間が勝負ですね」
「ああ、夜明け前というのは一番暗いという。その間、城に忍び込む。屋敷には、多分いまい、あの伯爵はおもったよりずっと手ごわい。今頃は俺がいなくなったことを感じて、城の方に移っているはずだ。あいつも民衆の反乱はこわいはず」
「油断なされぬよう。伯爵は数百年ああして生きながらえてきたものです、いかに日の光が奴を灰にしてしまうとしてもです」
「わかった」
 タチカゼは指笛で天馬を呼んだ。
 空から舞い降りてきたのはあの雄々しい天馬だ。
「ふふ、こいつも賢いな。馬屋につながられたままではいなかったとみえる」
タチカゼが天馬に跨る。
「いいか、三日のうちに伯爵の断末魔が聞こえなければ、すべての未練を断ってここを離れよ。あいつは、昼の光が邪魔し
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