ファントム・バレット編
Crimson Ammo.
顛末・Period2 ―動き出す歯車
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Sideシノン
「……………」
蛇に睨まれた蛙。とはこうゆう事を言うのだろうか。
目の前には黒星を構えたやや小柄なプレイヤー、死銃の協力者であったそいつが居た。
撃鉄は既に起こされ、その弾丸が発射されるまでにはコンマ5秒あれば十分だ。少しでも動けば殺られる。黒星の弾丸がシノンのアバターにダメージエフェクトを刻んだ瞬間に現実世界で心臓を止める致死の薬品が撃ち込まれる。
これがGGOを密かに騒がせている《死銃伝説》のトリックだった訳だが、シノンの場合既に『準備』が完了している可能性があるために、ゲーム内からの銃撃で死なないという事実はある意味通用しない。
しかし、
(私は……もう、逃げない!!)
2人の異世界からの訪問者に教えられ、長年の相棒に励まされ、シノン/詩乃の中から迷い、恐れは小さくなっていた。
逃げず、恐れず、何者にも囚われず、武器を握ったならば全力で戦う。最後まで諦めずに。
トクン、とヘカートが脈を打ったように熱を帯びる。まるで『戦え』と言っているかのように。もちろん、それは錯覚だろう。
だがこの時シノンからそんな理屈は吹き飛んでいた。
「はあああぁぁぁっ!!」
「!?」
両腕で抱えていたヘカート、そのの銃口をノーモーションで黒星にぶち当てる。黒星の銃口が火を吹くが、逸らされた銃身から放たれた銃弾は遥か上空に飛んでいく。シノンはその体勢のままヘカートのトリガーを引き絞った。
轟音が鳴り響き、黒星が跡形もなく消え去る。その動揺から相手が抜け出す前に止めを刺そうと、サブアームのMP3に手を伸ばした。
しかし、
「甘いよ〜、お嬢ちゃん」
刹那の内に距離を詰めてきた相手はシノンの足を払うと、首に貫手を刺してきた。
「ぐ…ぁ……!?」
硬い岩である地面に頭をぶつけ、衝撃で一瞬意識を失うと、次の瞬間は鋭利な金属爪が首元に突き付けられていた。
「今のはちょ〜っとビックリしたな。でもまぁ、関係無いけどね〜」
そう言って取り出したのはさっきと同じく、黒星。
「ちなみにね、コレ、さっきのやつなんだよ。破壊なんかされてない。撃たれた瞬間、袖口にしまったのさ……。残念でした!」
額に突き付けられる黒い銃口。
(………いや、嫌だ!こんな、所で……)
キリキリとトリガーが引き絞られ、死の弾丸が放たれる―――
(私は……生きたい!!)
声に成らない叫びが―――
―――紅の疾風を喚び、シノンを抱え、離脱するのと
―――巨大な力の塊が頭上から岩ごと殺人者を叩き潰すのはほぼ同時だった。
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