第二幕その六
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第二幕その六
「ならそこにノートゥングを突き刺す」
「そうするというのか」
「そうだ。これが恐れなのか?」
また逆に彼に問うてきたのだった。
「こんなのがだ。何でもないじゃないか」
「怖くないというのか」
「怖い!?」
そう言われても平気な顔のままであった。
「怖いとは何なんだ?」
「だから恐れじゃ」
「何も感じないさ」
やはりそうなのだった。
「全くな」
「何という奴じゃ」
「やっぱり御前は駄目じゃないか」
こう言ってまたミーメを否定する。
「所詮その程度なんだな」
「そこまで言うならばじゃ」
いい加減ミーメも頭に来ていた。
「実際に見てみるのじゃ」
「その竜をか」
「そうじゃ。見てみればわかることじゃ」
「なら見てやる」
ジークフリートはただ前を見ていた。
「その竜をな」
「見たことはなかったのう」
「ない」
「なら余計に見るのじゃ」
そして言うのだった。
「それこそじゃ」
「それこそ?」
「見ただけで気が遠くなるわい」
くすくすと笑っての言葉であった。
「それだけでじゃ」
「そこまで言うのか」
「言うぞ。真実じゃからな」」
あくまでこう主張するのであった。
「目の前が真っ暗になり足元がぐらついてじゃ」
「それでどうなるっていうんだ?」
「胸が締め付けられ鼓動が激しくなってじゃ」
そしてさらに言葉を続けていく。
「御前にこのことを教えてやったわしにじゃ」
「何だというのだ?」
「感謝して愛することになるぞ」
「僕が御前を愛する!?」
ジークフリートにとってはこれは全く心外な言葉だった。
「馬鹿を言え」
「馬鹿にだと!?」
「そうだ。そんな筈があるものか」
こう言うのだった。
「戯言を言うな」
「戯言ではないぞ」
「もう御前に話すことはない」
いい加減彼も頭にきたのである。
「さっさと何処かに行け」
「またそんなことを言うのか」
「何度でも言ってやる。とにかくだ」
今にもノートゥングを抜こうとする。それを見たミーメも流石に去る。
「やれやれ、わかったわ」
「さっさと何処かに行け」
「ではそろそろ出て来るからじゃ」
ミーメはこそこそと去りながらジークフリートに告げる。
「用心するのじゃぞ」
「用心なぞ必要ない」
「泉に水を飲みに出て来るからな」
竜の動きも教えておくのだった。
「ではな」
「おいミーメ」
その去ろうとするミーメにまた来たジークフリートだった。
「御前が泉のところに行くならな」
「何だというのじゃ?」
「竜をそこに追い立てるぞ」
半分本気の言葉だった。
「いいな」
「何ということを言うのじゃ」
「そいつが御前を飲み込んでしまったらそれから竜を倒してやる
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