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戯画(カリカチュア)
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戯画(カリカチュア)
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を注いだ。リビングとはいえ、大邸宅ではなく官舎である。対面式のキッチンから、オーベルシュタインの座るソファは良く見えていた。いつにない位置関係に、フェルナーは違和感を覚えた。そしてそれはどうやら、上官も一緒だったようだ。
「卿が台所に立つ姿を見ようとはな。ふむ、良い香りだ」
日頃から、少なくとも勤務時間内に飲み物の好みなどを口にしないオーベルシュタインであったが、どうやらコーヒーを嫌っている様子はないようだ。
「冷やかさないで下さいよ。私だって気恥ずかしいんですから」
そう言いながら、二人分のコーヒーをリビングのテーブルに置いた。
「そういえば、閣下はいつもミルクを入れていましたね」
砂糖を入れるところを見たことはないが、確か休憩時に飲むコーヒーには、高級そうなミルクを注いでいた。
「いや、これは入れずとも良い。軍務省のインスタントは、ミルクでも入れねば飲めたものではないからな」
「確かに、うまいとは言いかねる代物ですね」
「ああ。この挽きたてのコーヒーならば、存分に香りも味も楽しめるのだがな。……さて、朝食だが。卿はいつも、ベーコンレタスバーガーだったな」
オーベルシュタインは細長い指で袋を開封し、フェルナーの前にバーガーとポテトを置いた。
「はぁ、それは間違いないんですが、閣下、良くご存じで」
言うまでもなく、オーベルシュタインはフェルナーの上官である。部下であるフェルナーが軽食の買い物に出ることはあるにしても、オーベルシュタインが部下の飲食物を買う機会は、普通ない。執務室で軽食をかじりながら共に仕事をすることはあるが……。
「店頭の写真に、卿がいつも食べているものと似たものを見つけたのだ」
「はあ……」
さすがの観察眼としか言いようがなかった。もしかするとその義眼には、記録保存機能でもついているのかもしれない。オーベルシュタインはその半白の前髪を軽く掻き上げて、自分の朝食を取り出した。かくして軍務省の要人2名は、休日の朝を芳醇なコーヒーの香りとともにスタートさせたのだ。
「閣下は、フィッシュ・アンド・チップスだけでよろしいのですか?」
痩身で長身な上官は、ソファにゆるく腰掛け、その長い脚を組んで朝食を摂っていた。歩きながらでも気軽に食べられるフィッシュ・アンド・チップスの人気は、銀河帝国でも揺るぎないものである。しかし、主食にするには少々手軽すぎると言えよう。しかし彼の上官は、薄い唇の動きをいったん止めると、「たまには良かろう」と一言呟いて、コーヒーを口に含んだ。
「昼食は私の馴染みの店を予約してある。せいぜい空腹にしておいてくれ」
「ほお、それは楽しみです。……閣下にも、馴染みの店なんてあるんですね」
「……どういった意味かな?」
「いえ、お気になさらないよう、お願い致します」
「そうか」と独りごちるように
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