第二幕その三
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第二幕その三
「用心するのだな」
「それでは貴様はだ」
アルベリヒは敵の言葉を聞き終えてからまた述べた。
「指輪から手を引くのか」
「私は愛する者にそれを任せる」
それが彼の考えであった。
「生きていようが倒れようがその自由だ」
「ふん、どうだかな」
「英雄だけがわしの役に立つのだ」
彼は言い切った。
「それこそがだ」
「わしが指輪を奪い合うのはだ」
アルベリヒの言葉は剣呑なものになってきていた。
「ミーメだけなのか」
「今のところはな」
さすらい人はさらに彼に忠告してきた。
「奴だけだ」
「それなのにわしが手に入れられないというのか」
「その英雄が手に入れるのだ」
やはり彼ではないというのである。
「二人のニーベルングが指輪を欲し」
「ふん」
「指輪を見張るファフナーは倒れる」
「あの竜が倒れ」
「そして英雄のものとなるのだ」
そうなると今話す。
「それ以上も知りたいか?」
「まだ言うことがあるのか」
「あの場所にいる竜だ」
また後ろを見ての言葉である。その洞穴を。
「貴様が奴に命が危ないと伝えればだ」
「どうだというのだ?それで」
「喜んでその下らないものをやるかも知れんぞ」
彼をからかっているのは明らかであった。
「それでな。それではだ」
「今度は何をするつもりだ」
「貴様の為にあの竜を起こしてやろう」
そうするというのである。
「ファフナー!」
「呼ぶのか」
「起きるのだ竜よ」
「誰だ」
するとだった。地の底から響き渡る様な恐ろしい声が聞こえてきた。
「わしを呼ぶのは誰だ」
「貴様の危機を知らせに来た者がいる」
「危機だと?」
「そうだ、貴様が守っているその宝をだ」
こう彼に告げるのであった。
「命の代わりに差し出せば死から救うとな」
「何が欲しいというのだ?」
竜は洞穴から彼の言葉に問うてきた。
「それで何をだ」
「わしだ」
アルベリヒがここで彼に告げた。
「このわしだ」
「貴様だというのか」
「そうだ、いいか竜よ」
アルベリヒはさらに彼に告げるのだった。
「英雄が来る、貴様を倒そうとな」
「ではその英雄を喰らおう」
ファフナーはこう答えた。
「出て来たその時にな」
「その英雄は大胆不敵だ」
またさすらい人が彼に告げた。
「剣は鋭いぞ」
「そいつは指輪だけが欲しいのだ」
アルベリヒも言う。
「その指輪をわしにくれるのならばだ」
「指輪をだと」
「そうだ」
まさにそれだと答える。
「そうすれば貴様の代わりに戦ってやるぞ。そして貴様は」
「どうなるというのだ?」
「他の財宝を守って静かに長く生きることができるのだ」
こう彼に告げる。
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