第一章 【Re:Start】
第一話
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かく、クラリーベルの方には理由が現状ない。変に興味をもたれて探られたら多少困る。生徒会長としては忙しいこの時期、出来れば早く書類も片付けたい。
「そっちの都合の問題なんですから、損失の保証もそっち持ちでしょう。高い店で奢ってもらえるはずだったんですよ! それを蹴らざるを得なかったのですからこの後食べに行く分、あなたに払って貰わないと」
「……はあ。いくらだい」
カリアンは諦めて財布からカードを取り出す。これ以上話しても埒があかない上、協力を取り付けた相手からの印象を悪くされても困るからだ。早く終わらせるためにもここは折れるのが一番。
カリアンとして悲しいのはその代金が自分のポケットから出ていくことだ。生徒会長としての権限で予算を使おうにもこんな理由で予算が割けるわけがない。ちょろまかすにはリスクとリターンが余りに釣り合わない。
都市内において通貨代わりに使われている電子カード。キャッシュデータの振込金額をフリーの状態でクラリーベルへと差し出す。それを受け取りクラリーベルは自分のカードへと代金を受け渡しカードを返す。
「はい、どうも。じゃあ私たちはこれで。ご飯食べに行きますよレイフォン」
「え? あ? あ、はい。すみません、僕たちはこれで失礼します」
久しぶりに呼ばれ一瞬理解が及ばないレイフォン。カリアンに退出の挨拶をしつつクラリーベルに手を引かれ、明らかに凹んでいる扉を通ってレイフォンは部屋から出る。途中にいた何故か不機嫌なレヴィに挨拶しつつ、レイフォンは生徒会塔から出て行った。
「話は終わりましたか?」
「ああ。済まなかったね追い出して」
外に出ていたレヴィを迎えつつ、カリアンは床に散らばった書類を纏めデスクの上に戻していく。一枚でもこれが無くなったら面倒なことになる。拾いきり、見落としが無いか確認してデスクに座る。
「何の話だったんですか?」
「言っただろう、書類の不備だよ。後から来た彼女はまあ、彼の保護者みたいなものだ。居場所がわからず心配で探していたらしい」
「へー。何か荒れているみたいでしたけど、大丈夫でしたか?」
「ああ、大丈夫だよ」
そう、大丈夫。レイフォン・アルセイフの入学書類を眺めながら、カリアンはそう呟く。何の問題もない。
クラリーベル・ロンスマイアの介入は予定外だったが、結果は許容範囲内で収まった。全くの無協力、そうなれば最悪だったが、そうはならなかった。彼女の言葉から完全な拒絶は無いというのは分かった。そして無慈悲な人物ではないとも。ツェルニに後がない事を示したら考える素振りを示した。
妥協点があるとわかれば『武芸科への転科』という無理を暗にぶつけつつ『都市戦の協力だけで充分』と代案を表に出し
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