第一章 【Re:Start】
第一話
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あるのかな? これは鍵だよレイフォン・アルセイフ。武芸科に入りたまえ」
これは罠だ。ペテンだ。同情を誘っているだけだ。
それが分かるのに、言葉が出てこない。外でがさりと何かが動く音、衣擦れの音、感覚がやけに研ぎ澄まされている。床が揺れているようにさえ感じる。
体のどこかが冷えていくのを感じる。けど、まだ、大丈夫だ。だが、これ以上言わせてはならない。目の前のこいつを――
「ですから、僕は……」
「繰り返すだけか。老婆心ながら言わせて貰おう。君は――」
「ぅうらっしゃあああああああああ!!!」
怒声が、聞こえた。それもかなり聞きなれた人物の。
視界の端で揺れる、赤毛の尾。
凄まじい衝撃音で開いた扉。そして視界の中には宙に浮いた飛び蹴りの姿勢のクラリーベルとその背中のレヴィ。
凄まじい勢いで飛び込んだのだろう。慣性に揺られ、レヴィの体がスライドして分離、単身空へ。
「会長! キャッチ!!」
「クッ!」
瞬間、カリアンは身を翻す。体を捻るように無理やり右へ。飛来物の進路から身を躱す。一瞬の判断、素晴らしい身のこなし。
だが、レヴィは許さない。獲物をおう蛇の様にうねる腕。鎌の如きそれが偶然カリアンの首をロックする――ッ!
変則ラリアット。バランスの崩れたカリアンにそれを防ぐ手立てはない。一瞬の攻防を制したのはレヴィ。引き倒され緩衝材へとボディプレスの連撃が襲う!
「きゃふ」
「――ガッ、グフ」
一撃でノックアウト。TKOも無しの一発KO。勢いで眼鏡が吹っ飛ぶ。デスクにぶつかり書類も吹っ飛ぶ。
この惨状を作り出した本人はくるりと宙で半回転。足を引っ込め地に降りる。
「……フッ」
ドヤ顔を向けられても困る。
一体何がしたいのか。突然すぎる来訪に空気が一転する。泡沫と浮かんでいたナニカの思考も、いつの間にか消えている。取り戻した思考の中、まず最初にレイフォンがした行動。それは取り敢えず騒ぎを隠すために扉を閉めることだった。
「私たちをお腹空かせておいて、自分は可愛い先輩といちゃこらですか。良い身分ですね。ご飯奢れ」
「あの、そういうつもりじゃなくて……ちゃんと覚えてたんですけど、少しだからって言われて……」
「私はお腹がすいてるんです!」
胸ぐらを掴まれてグワングワンと揺すられる。何だこれ。何でこうなった。レイフォンの思考は事態の急転についていけず白旗だ。取り敢えず財布は右ポケットにはないですクラリーベル様。
「君は、誰だ。何の用かな非常識な」
全力で同意したい。
レヴィの下から這い出したカリアン。それを見てクラリーベルの手がレイフォンか
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