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鋼殻のレギオス IFの物語
第一章 【Re:Start】
第一話
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ンが床に転がる。そしてカリアンと向かい合う。
 眉根を潜めるカリアンの姿に、彼は一体どこまで調べたのだろうとレイフォンはふと思う。少なくとも全部知っているわけではない。自分がした行為、した理由、辿った過去、その思い。どこまでかき集めたのか。もっとも、今それを知れたところでどうにもならない。知りたいと思うが、これ以上深く聞いて自分の心を揺らすのは得策ではない。はっきりと意思を出せるうちに終わりにすべきだ。

「追放なら別ですが、ありがたいことに温情を貰えました。まだ僕はグレンダンの民で、その恩恵も受けている。許されませんよ。――どうやら勘違いのようで、記入ミスはありませんでした。お返しします」

 書類をカリアンへと差し出す。だが、カリアンからの手は伸びない。探るような冷たい、感情の読めぬ瞳がひたすらにレイフォンを見据える。
 ああ、この眼は苦手だ。先の情を訴えるような目で無くただ観察対象を探るような無機質な眼。相手からの立場が変わってしまったことがひと目で分かってしまう。他人が下す自分の価値が、余りにも容易く変わってしまう瞬間がレイフォンは嫌いだ。

 カチリ。カリアンが眼鏡を軽く押し上げる。

「許されない、か。なるほど」

 何かを確かめるように一度、カリアンが呟く。

「君はそれでいいのかい? レイフォン・アルセイフ」
「……よく意味が分かりませんが」
「君自身の意思を聞きたいという事だ」

 カリアンの瞳が元の様相に戻る。何かを探り終わったのだろうか。何かを含む物言いで不敵に笑う。

「ここは君が生まれた都市ではない。女王の命令を守るかは君次第、直接的な強制力あってのもではない。極端な話嘘でも付けばいい。私ならそれに協力も出来る」
「そういう話じゃ――」
「私としては、だ。そういう話でいいんだよ。それに君とてそうのはずだ。断る際、何においてもまず君は自分の意思でなく、命令を理由に上げている」

 コツコツ……軽い音、靴の音。カリアンが動き、ソファの後ろからレイフォンの前へと向かう。光の反射したレンズのせいで、その瞳が宿す色は見えない。

「私はね、自分の意思を持つ者が好きだ。夢を持つもの、憧れを目指すもの……そうありたいと思いその生き方を貫く。良かれ悪かれ、そこには力が溢れている。夢見がちな子供の戯言だと笑う大人もいない。そういった者たちの力になりたいと思い、その場所を守るためにここにいる。思いがあるなら、縛るべきではない」

 床に落ちたペンをカリアンは広い、それをレイフォンへ向け差し出す。

「不満はないのかい? 疑問は、迷いは、後ろめたさは……唯々諾々と従い、心を殺す。私はね、私の思いが分かるといった君の意志を守りたい。見えない首輪に従うかい? 君は本当の意味で自分の意思を持ったことが
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