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鋼殻のレギオス IFの物語
第一章 【Re:Start】
第一話
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ない。かつての自分の行動を間違いだと思えない自分が、それを否定していいとさえ思えない。

 自分が手を貸せばカリアンの望みは叶えられるだろう。それも恐らく、酷く簡単に。――だけれど。
 肩にかかる力が増す。レイフォンはペン先を紙へと向け、

「人員の空きなら心配しないでいい。君はサインするだけで終わりだ。待遇もA特待に変えよう。それだけの実力が――」

 訂正箇所に、更に×を上乗せした。

 ギシ、とカリアンの手が強ばるのを感じる。
 それを無視し、武芸科、となっていたところを、一般教養科、と改めて書き直す。
 
「話を、理解して貰えなかったかな?」
「いえ。理解はしましたし、その思いが報われて欲しいとも思いました」
「なら何故――」
「ですが、それを受けるわけにはいきません。いえ、正確には許されていません」

 普段の自分ならきっと、相手に同情して流されるか、雰囲気に飲まれて唯々諾々と受けていただろう。だが現状、それは許されない。
 自分の意思よりも上位のものが有る。それがある限り、レイフォンは自分の意志が弱かろうと、機械的に拒否の言葉を口から出せる。それを一瞬、ありがたいと思ってしまいさえする。そんな自分に気づき、小さく自嘲の笑みを浮かぶ。

 (しがらみ)というものは不思議なものだ。あれば不自由さを感じるというのに、それが壁となり確かな先を見せてくれることもある。ただただ何もない広い空間よりも、たとえ迷路のようであれ、自由を阻む壁が進むべき方向を示してくる。決められていれば動くことに迷いはなくなる。もっとも、壁というよりは鎖だが。
 そんなレイフォンに疑問の色がこもった声が飛ぶ。

「許されて、ない?」

 カリアンにレイフォンの“壁”は見えていない。親元を離れ、故郷を離れ、単身渡った子供。定住するわけでもない地。来たばかりのそれは、ここでの役割さえ何一つない身は、彼から見ればまさしく自由のさなかの存在だろう。
 白地図に絵を描くように、開拓地に未来の虚像を描くように。犯罪を犯した、その事実が、社会の論理を無視したというそれが更にその考えを補足する。
 カリアンの瞳がその真意を探ろうとこちらを見据える。

「ええ。“あのせい”で僕が追い出されたのは知ってますよね。ここに来たのは「一般常識を学んでこい」と陛下……グレンダンの女王から命令されたからです。そしてその為に、武芸科には入るなと」
「女王……その人物の命令は絶対だと?」
「グレンダンに生きる者なら。ですから、僕の意志はどうあれそれに逆らうわけにはいきません」

 もっとも、逆らう気があるのか。そんな気概が自分の中に残っているのかさえ分からないが。

 足に力をいれ前へ。肩にかかる手を押しのけレイフォンは立ち上がる。持っていたペ
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