第一章 【Re:Start】
第一話
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こまで慌てることでもない。本来なら雰囲気に飲まれていたかもしれないが、今は違う。自分の意思を離れたところにある「命令」がレイフォンの思考を安定へと誘う。
「そんなことはしない。これはあくまで「お願い」と「確認」だよ。こっちも命がかかっているんでね」
「命……?」
断る言葉を出そうとした矢先、カリアンの言葉につい聞き返してしまう。肩にかかる力が少し、強くなった気がした。
「ああ、都市の命だ。セルニウムとその鉱山について、君はどの程度知っているかな?」
「レギオスの燃料である金属ですよね。都市ごとにいくつか保有していて、定期的に補給による。なくなれば終わりです」
「鉱山の手に入れ方はどうだい?」
「都市戦で戦って、勝った方が相手の鉱山を……まさか」
肩に伝わる振動でカリアンが小さく笑ったのを感じた。レイフォンもカリアンが言いたいことに気づく。そして同時、誘導されたことも。出稼ぎで行ったシュナイバルでも何度もくらった手だ。重要な部分を先に小出しで出し、興味を引いてから聞いて答えさせ、自分から関わらせて絡め取る。バイト先のおっさんやシンラの得意の手だ。
しかし気づいても少し遅い。レイフォンは既に興味を持ってしまっている。どうせ断るのだから、せめて最後まで聞こう。そんな風な意識に変わってしまっている。
「そのまさかさ。ツェルニは二年前の都市戦で鉱山を奪われた。保有数1。それが現状だよ。そして都市戦は基本的に二年周期だ」
「つまり今年……だから僕、ですか」
「その通りだよ。学園都市が当たるのは同じ学園都市。君からしたら簡単な話だろう」
「否定はしません」
グレンダンの都市戦は遭遇した他の都市との武芸者同士の戦闘だった。細かいルールは知らないが基本的に戦力で決まる。ここも似たようなものだろう。ならば確かに、自分が出れば容易く終わる可能性が高い。仙鶯都市におけるジルドレイドの様な、そんなイレギュラーでもない限り問題はない。
「私はね、この都市が好きだ。このままでは緩やかに死ぬだけだと、変えなければとそう思って立候補し、前の生徒会長を蹴落としてこの地位にいる。綺麗なだけで守れないなら、真っ当でない手も使う」
「それがこれ、ですか? 人を払ってまで……」
途端、肩にかかる力が重みをます。カリアンが体を乗り出すように下に下げたのだ。言い聞かせるように、同意を求めるように、カリアンの声が近くから届く。
「身を焦がすほど守りたい者の為なら人は手を汚すさ。少なくとも私はそうだ。理解できないかね?」
「……いえ」
それを否定出来るだけの材料は自分の手の中にはない。それどころか既にレイフォンは手を汚した身だ。カリアンの気持ちは理解できるし報われて欲しいと思う。何かを守るのに必死な人間を否定したくは
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