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鋼殻のレギオス IFの物語
第一章 【Re:Start】
第一話
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を見て楽しんでいたのだろう。遅刻者への僅かな罰、といったところか。
 どうやらこの会長真面目な人間でなくユーモラスさもあるようだ。こっちの気を解すつもりでやったのならなかなかである。

「冗談はそれくらいにして本題に入ろうか」

 立ち上がったカリアンは座ったままのレイフォンへと近づき、手に持った書類を渡す。

「書類不備って言われても、どうすればいいんですか?」
「そこまで難しいものじゃない。訂正箇所を修正しておいたから、君はそれを確認してサインしてくれるだけでいい」

 ……訂正箇所を修正して“おいた”?
 ふと湧いた疑問。それを理解し切る前に書類とペンを受け取り目を通す。何のことはない自分の情報が書かれた紙。そしてその中で色をつけられ訂正された一文。それの意味が分からず一瞬レイフォンの思考が止まる。そして理解した瞬間、それを見計らったかのように肩に置かれたカリアンの手に鳥肌が立つ。訂正されていたのは学科先だ。

「間違いがひどいじゃないか。君が入ろうとしたのは武芸科だ。そうだろうヴォルフシュテイン候補」
「――――ッ!!」

 後ろから押さえ込まれるように肩に置かれた手。静かに、けれど強い力のこもったそれがレイフォンに立ち上がらせることを許さない。上から届く声が、背後から抑えられている事が、その存在が、レイフォンの意識を縛る。
 どこでバレた。浮かんだのはその言葉。自分が武芸者だと知っている人間など一緒に来た二人以外知らないはず。他に同郷がいたとしても知らせる必要も、知る機会もない。天剣候補などなおさら。なのに何故。
 
「知っているのが不思議かい? 僕は昔、グレンダンを訪れたことがあるんだ。五年ほど前にね。ちょうど天剣というものを決める大会があった。記憶には自信がある」
「あの時の、大会を見た……」
「素晴らしいものだったよ。興奮冷め切らず近くにいた少女と一言二言会話も交わした。運良く優勝した少年の知り合いの少女と話せた。もっと話せばよかったと後で後悔したよ」

 遡る記憶の中で思い出す。その少女は十中八九リーリンのことだろう。あの大会の次の日、食事の席の会話で聞いた覚えがある。旅行者の男性と話した、と。きっとそれがカリアンだ。リーリンは言っていた。年上で眼鏡をかけた人だったと。やはり眼鏡か。痴的でなく知的だったが警戒するべきだった。
 混乱して明後日の方向に偏見を深めるレイフォン。そんなレイフォンの思考をカリアンの声が揺さぶり続ける。

「君が追い出された原因も知っている。そのゴタゴタで間違えたのだろう? サインが嫌なら、頷いてくれるだけでもいい」
「脅しですか? 従わなければバラすっていう」

 狙いがわかって精神に余裕が出てくる。元々予期せぬ事態に揺れていただけだ。この程度のことならばそ
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