第一章 【Re:Start】
第一話
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来るまで待っていてもいいのだが、それだとクラリーベルの腹の虫が文字通り収まらない。怒りをぶつけ何か奢らせるべきだろう。レイフォンの財布が空になるまで。考え、つい足に力が入ってしまう。早く見つけて勢いで押して財布を開けさせたい欲が高まる。
「取り敢えず二手に別れましょう」
「分かった」
「じゃ、そういうことで。場所は同じで」
キュッとしてドーン。周囲に人がいないことを確認し、石畳が少し削れるほどの力の入った足でクラリーベルの姿がすぐさま消える。
そう、全てはネコ科のお腹がすいた故に。
気がついたら三十分以上歩いた末に生徒会室の中にレイフォンはいた。
「あれ?」
今更ながらにおかしい気がしてくる。そもそもずっと手を捕まれた挙句こっちの言葉を聞かずにひたすらしゃべり通すレヴィの勢いに乗せられたのが間違いだった気がしてくる。
「じゃあね、アルセイヌ君!!」
それに感づいたのだろう。レイフォンが何か言おうと思ったときには既にドアは大きな音を立て閉まっていた。
振り向きかけた姿勢のまま伸ばしたレイフォンの手は中途半端な位置で宙をさ迷う。
嵌められた。そんな思いが頭に浮かぶ。
そんなレイフォンの思考を動かすように声が飛ぶ。
「往々呼びつけて立たせたまま、というのも何だろう。座って欲しい」
この部屋の主、生徒会長のカリアン・ロスはそう言ってソファを手で示し、すぐに手元の書類に目を戻した。
帰るならば今が最後の機会だろう。締まるドアを見て感じた違和感と危機感。だが、ここまで来て今更戻るのもアレだ。雑音を無視して軽く息を吐いて心を整え、レイフォンは勧めに従って座り、ふとカリアンを注視する。入学式をほぼサボったようなもののレイフォンにとって彼の顔を見るのは初めてに近い。
長い銀髪に眼鏡の奥の知性を宿した鋭い目。朗らかな笑みを浮かべた整った容貌には惹きつけられる人もいるだろう。執務用の机に座り手を組んでいる姿は政務者の貫禄を感じさせる。だが、レイフォンは油断しない。寧ろ警戒する。
今までの経験上。こんな感じの知的な雰囲気を持った人間でレイフォンがあってきた人間は須らくロクな人間じゃなかった。墓漁りする眼鏡とか全裸とか言い出す眼鏡とか。知的な眼鏡は寧ろ痴的なメガネである。
会長の為のデスクに座っているカリアンは何枚もの書類に目を通し、サインしていく。ちらり、とその瞳がレイフォンへ向く。
「呼びつけておきながらこんな様で済まないね。この時期は色々と忙しいんだ。陳述書にクラブ申請書、科の予算や企画書――それに問題を起こした者の処分とかね」
入学式で乱闘を起こした者のことだろう。色々とご苦労なことだ。見た限り書類は机
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