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鋼殻のレギオス IFの物語
第一章 【Re:Start】
第一話
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ーベルの眉根がよる。カツンと噛まれ、銜えられたコップがぷらぷらと揺れる。
 
「迷っているなら探しに行ったほうがいい。待っていても時間の無駄」
「ですかねー。戻るか、それとも先に食べちゃいます? お腹減りました」
「約束したのにそれは少し可哀想。私は大丈夫」
「私はお腹空きました。約束を守れない方が悪いんですようんうん。迷うほうが悪い。いっそ奢って貰うまでありますねこれは。レイフォンが悪い」

 レイフォンが悪いと呟き続けるクラリーベル。そんな彼女にアイシャは伸ばした人差し指を近づける。その指をクラリーベルは何だと思い眺めていると、そのまま指はゆっくりとクラリーベルが咥えたコップへ。こつん、と優しく当たる。

「フッ!」

 声と共に放たれたのは凄まじいデコピン。放ったのは人差し指で隠していた親指と中指。
 伝達する衝撃。衝撃を伴った硬質なコップはそのまま支えていたクラリーベルの歯に直撃する。
 半ば不意打ちに近いそれ。鈍い痛みがクラリーベルの体を貫く。

「痛! ちょ、何を」
「余り悪く言わないで欲しい。迷っても仕方のないところがある」
「なら先に言葉で言って下さいよ」
「次からは善処する」
「そんなうちの陛下(政治家)みたいな……」

 ある意味さっきの仕返しなのだろうか。コップを離しつつクラリーベルはアイシャを見る。
 レイフォンのことを悪く言ったのが恐らくカンに触ったのだろう。今まで見てきて知れたのは、彼女にはレイフォンに対する盲目的な面があること。

 視界の先の相手は何の代わりもなくこっちを見ている。いつもそうだ。表情もあまり変えず、声の抑揚も変わらない。何かが止まっているとさえ思う。そもそもクラリーベルはアイシャの事情をそこまで詳しく知らない。知っているのはせいぜい汚染獣に滅ぼされた都市の生き残りでレイフォンが連れてきたということだけ。細かいことは知らないし、現状知る気もない。
 もっとも。

(あの眼だけは別ですが)

 伸ばされた髪から時折覗く右の眼。左右非対称の色を宿したそこを見て思うのは、かつてアルシェイラから渡された一枚のカルテ。

「必要がなかった、か」
「何?」
「ああいえ、独り言です。お気になさらず」
「そう。突然言い出すからクラリーベルがおかしくなったのかと思った。良かった」
 
 随分なお言葉で。
 付き合ってみてわかったが、特に悪意などなく自然体なのだから困る。正直は美徳というがどうなのだろう。取り繕うことも出来るらしいが、そんなことせず自然体で接せられている現状を喜ぶべきなのか嘆くべきなのか。
 まあ、別にどっちでもよく、特に気にすることでもない。だがまあ、

「もう少しオブラートに包んでもいいですよ。相手のことを思った言葉は大事です。優先順
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